AnthropicとAccentureは協業を拡大し、企業のAI導入を試行から本格運用へ移す体制を強化すると発表した。新組織の設置や人材育成を通じ、産業全体でのAI活用を加速させる狙いがある。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
Anthropicは2025年12月9日(現地時間)、Accentureとの協業を拡大し、企業のAI導入を試行段階から本格運用へ移すための取り組みを強化すると発表した。両社は長期的な協力関係を前提とした枠組みを構築し、組織規模でのAI活用を進めたい企業を支援する方針を示している。
発表内容の中心となるのは、両社が共同で設置する「Accenture Anthropic Business Group」だ。AnthropicがAccentureの重点パートナー群に加わり、「Claude」関連サービスを専門的に扱う専任組織や販売戦略が含まれ、長期的な投資を前提とした取り組みとなる。
また、Accentureは約3万人の従業員にClaudeの研修を実施する計画を示した。
この研修対象には、顧客環境に直接入りこみAI活用を実装するエンジニアも含まれ、世界的にも大規模なClaude活用人材群が形成されることになる。企業は自前でAI人材を育成せずとも、アクセンチュアの専門家集団を利用して導入作業を進められる体制が整うという。
Accentureはソフトウェア開発工程にコーディングエージェント「Claude Code」を適切に組み込むための新たな共同商品を発表した。Claude CodeはAIコーディング市場の過半を占める規模となったという。今回の取り組みにおいて、投資収益率(ROI)の計測枠組みと、AI前提の開発プロセス設計、進化に対応する教育体系という3つの要素を組み合わせ、企業の開発現場における生産性向上を体系的に支援する。より短い開発サイクルで製品を提供しやすくなる可能性があると説明している。
共同の業界別ソリューション開発も始まっている。対象は金融やライフサイエンス、医療、公共分野など、規制と安全性の条件が厳しい領域だ。金融領域において、膨大で複雑な書類処理をClaudeの分析能力とAccentureのドメイン知識で効率化することを想定している。ライフサイエンス領域における活用例は、研究データ解析や手順書作成支援、臨床試験関連業務の簡素化が挙げられている。公共分野においては、行政サービスに関する案内や手続き支援を行うAIエージェントの開発が狙いであり、個人情報保護や法制度順守を重視した仕組みを構築する方向で進められている。
両社は責任あるAI利用に基づいた価値観を共有していると説明する。Anthropicの憲法型AIアプローチとAccentureのガバナンス知見を合わせ、透明性や説明可能性に配慮した運用を目指す。Accentureは各地のイノベーション拠点にClaudeを導入し、大企業が安全な環境下で試作や検証が可能な場を提供する予定だ。稼働中のシステムや機密データに影響を与えずに試行できることが重要だとされ、これが導入規模拡大の障壁低減につながると説明している。
両社はAccentureに「Claude Center of Excellence」を設置する計画も示した。ここでは企業固有の要件や業界特性に応じたAI活用方法を共同で研究し、新たなサービスや運用方法を設計する場と位置付けられている。
今回の発表の背景として、Anthropicの企業用市場シェアが24%から40%へ拡大した点が示されている。Accentureの顧客は担当チームを通じて導入方法を相談できる。Claudeが「Amazon Web Services」(AWS)と「Google Cloud」「Microsoft Azure」の3つの主要クラウドで利用可能という点も強調され、多様な環境で採用しやすい点が企業導入を後押しするとしている。
「2026年に取りたいIT資格」1位は“あのベンダー資格” 読者調査で読み解くトレンド
「コーディングはAI任せ」でエンジニアは何をする? AWSが示す、開発の新たな“主戦場”
“AIエージェントの次”のトレンドは何か Gartnerが描く未来志向型インフラのハイプ・サイクルCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.