企業がOpenAIの動向に注目すべき理由 巨額の資金調達と組織再編で何が変わったのかCIO Dive

ChatGPTの開発元であるOpenAIは、Microsoftとの提携関係の変化に伴い、非営利財団に加えて営利事業を展開する体制へと再編を進めている。この変化は企業にどのような影響をもたらすのか。Gartnerのアナリストが語った、今後の見通しとは。

» 2025年12月25日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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筆者紹介:リンジー・ウィルキンソン(Lindsey Wilkinson)(「CIO Dive」記者)

米国ジョージア州出身、アラバマ州立大学卒。アラバマ州立大学が発行する雑誌『Alice Magazine』編集長や、『The Crimson White』『Homeland Security Today』などへの寄稿などを経て、2022年5月より現職。AIがビジネスに与える影響を中心に取材している。

 「ChatGPT」の開発元であるOpenAIは組織体制を再編し、非営利組織「OpenAI Foundation」と、営利目的の公益企業「OpenAI Group」の2つの組織を設立した(注1)。2025年10月28日(現地時間、以下同)に発表されたこの再編には、Microsoftとのパートナーシップを見直し(注2)、両社がより自由に動けるようにするというニュースも含まれていた。

体制の変化やチャンスかリスクか

 Microsoftは引き続きOpenAIの株式の27%を保有するが、両社はこれまでよりも柔軟にAI製品を開発したり、第三者とパートナーシップを締結したりできるようになる。

 アナリストたちは「技術領域の意思決定者であるCIO(最高情報責任者)などは、今回の組織再編がもたらす影響を注視すべきだ」と述べている。影響は、価格設定の変化の可能性やイノベーションのスピード、利用アクセスの変化など多岐にわたる可能性がある。チャンスもリスクも数多く存在するというわけだ。

 Gartnerの主席アナリストであるジェイソン・ウォン氏は、『CIO Dive』に対して次のように語った。

 「今後数年間で起こり得る影響を企業は丁寧に検討すべきだ。OpenAIが狙うのは大企業の市場だ」

 OpenAIは直近数年で企業ユーザーを急速に獲得し(注3)、2025年2月の時点で約200万の有料企業ユーザーを抱えるまでに成長した。しかし、市場におけるベンダー間の競争が成熟するにつれ(注4)、プロバイダーとしてのOpenAIの優位性は以前より低下している(注5)。さらに、2023年に起こったリーダーシップに関する激しい争いも(注6)、OpenAIにとって追い風にはならなかった。

 それでも企業は依然としてOpenAIとそのツールに強い関心を持ち続けている。

 「OpenAIのビジネスは消費者によって支えられているが、実際には『Microsoft Copilot』や『Gemini』をはじめとして、企業が利用している他のツールと競争している。OpenAIの成長を真の意味で妨げているのは、多くのCIOがテクノロジープロバイダーに当然期待する大企業向けの安全対策が欠けていることだ」(ウォン氏)

今後のロードマップ

 OpenAIは組織を刷新し、資金調達能力を拡大している。これによりリソースの一部が、大企業向けの安全対策を自社のモデルやツールに導入する取り組みに充てられる可能性がある。ただし、企業ユーザーは今後どのような対応を期待できるのかについて、OpenAIは詳細を明らかにしていない。

 法律事務所であるConn Kavanaughのテクノロジー取引専門弁護士であるデレク・シャフナー氏は次のように述べた。

 「資金調達の方法が広がれば、製品の安定性やイノベーションが強化され、企業がOpenAIの技術に長期的に投資する際の安心感が高まる可能性がある」

 利益上限の撤廃は、価格体系にも影響を与えるかもしれない。財務面での不確実性を抑えたいと考えるCIOであれば、複数年にわたる価格保証を契約に組み込むという選択肢もあるだろう。しかし、その場合、仮に将来価格が下がったとしても、恩恵を受けられない可能性があるというデメリットも考えられる。

 「ある意味において、OpenAIはこれらのコストに関する市場価格を形作ってきた。しかし現在、市場全体で価格が下方向に圧力を受けていることも確かだ」(ウォン氏)

 専門家によると、利益を追求する姿勢が強まることで、一部のプロセスが省略される可能性もあるという。そのためCIOは、企業向けの安全対策がどのように変化していくかを注意深く監視する必要がある。

 「OpenAIが株主へのリターンを優先するようになった今、企業は警戒を怠ってはならない。利益の最大化を目指す過程で、特にプライバシーやデータセキュリティに関するコスト削減策が出てくる可能性があるためだ」(シャフナー氏)

 ケンタッキー州に拠点を置くAIソフトウェア開発企業であるVsimpleのバディ・ボックウェグ氏(創業者兼CEO)によると、AIベンダーがどこであろうと、技術がどのように進化しようと、企業が本当に注目すべき点は常に同じだという。それは提供される管理手段についてであり、スピードと安全性をどう両立させるかという点だ。

 「最も賢明なCIOは短期的な利便性よりも、柔軟性と相互運用性を優先するだろう」(ボックウェグ氏)

 訂正:本稿は、Vsimpleが2025年10月27日の週にケンタッキー州に移転したという事実を反映する形で更新された。

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