データ活用で成果が出ない原因は、質の低いデータを扱う「Garbage in, Garbage out」の状態にある。バンダイナムコグループの膨大なIP価値を最大化させるデータマネジメントの実例から、その成功の秘訣を探る。
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「データ活用で成果を出せずにいる企業は『Garbage in, Garbage out』の状態にある。つまり、質の悪いデータを分析してしまっており、意思決定につながる活用ができずにいる」と指摘するのはバンダイナムコネクサスでデータマネジメントを推進する吉村武氏(ビジネスプラットフォーム部 データプロダクト課 マネージャー)だ。
企業がデータ活用で成果を出すためには高品質なデータが不可欠であり、そのためには適切なデータマネジメントが求められる。本稿では、同社が実践した手法を実例とともに紹介する。
本稿は、アイティメディアが主催したオンラインセミナー「Enterprise IT Summit 2025秋」(2025年11月17日〜20日)の講演「データ利活用を実現するためのデータマネジメント」の内容を編集部で再構成したものです。
バンダイナムコグループは膨大な数のIP(Intellectual Property:知的財産)を保有する。それらの価値を最大化するためには、適切な地域に向けて適切なタイミングで商品を展開しなければならない。バンダイナムコネクサスはデータの分析によってこれを支援しており、その分析を可能にしているのがきめ細かなデータマネジメントだ。
同社は、DAMA International(Data Management Association International)が策定した、データマネジメントに関する知識を体系化した書籍『DMBOK』(Data Management Body of Knowledge)に基づいてデータマネジメントを推進している。DMBOKはデータマネジメントをデータガバナンスやデータセキュリティ、データモデリングなど11の知識領域に分けて体系立てている。本稿ではそれらを4ステップに分けて解説する。
データマネジメントを始める上でまず着手するのが、自社のデータマネジメントにおける課題の特定と戦略策定だ。
バンダイナムコネクサスは「データマネジメント成熟度アセスメント」によって現状の課題を洗い出し、その課題に「なぜか」という問いかけを重ねることで“解くべき課題”の特定を目指した。
「『データ品質が悪い』という課題に『なぜ』と問いかけていくと、手作業を廃止するための自動化ツールの導入コストや効果を評価するための調査が不十分で、導入の判断が先送りされているという根本的な問題にたどり着きました」(吉村氏)
こうして特定した課題への対策を考える際は、WBS(Work Breakdown Structure)で整理することを吉村氏は勧める。課題解決に必要な要素をWBSで細かく洗い出すことで、抜け漏れのない施策を考案できるからだ。
次に、データプライバシーの方針を決める。
データプライバシーの対象となるのは法令に定められた事項のみではない。個人情報保護法を参考にしつつ、プライバシー保護の観点で考慮すべき範囲を拡大すべきだ。吉村氏によると、個人情報を使いたい場合や自社以外の企業に利用させたい場合、海外で管理したい場合は自社の法務担当に相談すべきだという。
「昨今は生成AIに個人情報を読み込ませてよいかどうかも検討しなければいけません。私個人としては、生成AIに入力した場合の結果に未知数なところがあり、レピュテーションリスクが高いと考えられるため、現在は入力しない方が適切だと考えています」(吉村氏)
「データの周辺情報」であるメタデータの付与によって、データ活用に必要な辞書を整備することも重要だ。
例えば「login_day」という指標の値が「35」だった場合、指標名だけではこの値が「ログイン状態でいる日数」なのか「最初のログインからの経過日数」なのか、それとも全く異なる意味なのか判然としない。「login_dayは、ユーザーがログイン状態のまま利用した日数である」というメタデータを付与すれば、指標の詳細を理解した上でデータを利用できる。
吉村氏によれば、メタデータには次の3種類がある。
データカタログを導入したり、生成AIによるメタデータ分析を活用したりして、これらのメタデータを整備することで、雑然としたデータ群を分析可能なデータに整理できる。
データマネジメントの最後のプロセスがデータガバナンスだ。データガバナンスとは、企業やが保有するデータの管理と活用に関する方針やプロセスを定め、データマネジメントに責任を持つことを指す。
吉村氏は「データガバナンスには攻めと守りの両軸がある」と指摘した。「攻めのデータガバナンス」はデータ活用促進のためのデータガバナンスだ。データ活用指針の策定やデータ活用支援を実施する。「守りのデータガバナンス」はセキュリティや法的規制などの要件を順守するためのデータガバナンスだ。担当者ごとにルールやプロセスが異なっている状態の解消を図る。これらのガバナンスを維持するために、データガバナンス組織がデータマネジメント組織を監督し、統制する形が望ましい。
吉村氏はデータガバナンスを進めるためのポイントとして以下の4点を挙げた。
バンダイナムコネクサスはデータマネジメントの推進によって、膨大なデータの価値を引き出す土壌を整えた。売り上げ・販売数量の予測や、広告宣伝費の分析による予算の最適化といったデータ活用が可能になったという。
前者は、商品の企画、生産プロセス、販促活動の3つのタイミングで実施されている。これにより、売れない企画をしてしまったり、商品を作り過ぎてしまったりといったリスクの回避を図っている。
後者は、広告媒体によって異なる予算や効果を分析し、媒体ごとに投入する予算の最適化を試みた取り組みだ。その結果、費用対効果は高いが効果に上限のある媒体に投資すべき範囲が見えたり、費用対効果の小さい媒体への投資を縮小できたりといった成果が出たという。
データ活用の重要性が長年説かれているが、社内のデータを適切に整理して、その真の価値を引き出せている企業は少ない。データ活用に課題を感じている企業はぜひ、バンダイナムコネクサスのような先進企業のデータマネジメント手法を参考にしてほしい。
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