序章 今そこにあるIT革命〜業界地図を塗り替えるか!? ASP〜構図が変わる(1)

» 2000年05月22日 12時00分 公開
[吉田育代,@IT]

 世界がインターネットという情報技術(以下、IT)によって「ご一新」を迎えようとしている。江戸が明治の世となって、幕府は施政者でなくなり、武士は支配階級でなくなり、日本人の視野が“日ノ本の国”だけでなくなったように、これまでの産業の秩序がインターネットによって根本から覆ろうとしている。この一瞬を適切に動かないと、この先、死に至る傷を負うということだけはわかっている今。何がどう変わり、誰がどう動こうとしているのか。私は市場の水面下で激しくうごめいている地殻変動を、アプリケーション・サービス・プロバイダ、ASPというビジネスモデルの中に見ることにした。

 世界に張り巡らされたネットワークを活用して、アプリケーションをサービスとして切り売りするという発想は、これまでの企業のIT利用のあり方を一変させる可能性がある。もちろん、まだそのサービスの提供方法には曖昧な部分もあるし、明らかな問題点もある。しかし、ASPというスタイルが浸透するにつれて、これまでとは今までとはまったく違ったITビジネスの地平が開かれていくのではないかという期待を私は持っている。ここでイニシャチブを持つのはユーザーだ。ハードウェアベンダーでもなければ、ソフトウェアベンダーでもない。ユーザーはサービスの中身で使いたいアプリケーションを選び、満足できなければすぐ止められる。一度選んだものにいつまでもしばられる必要はない。それはユーザーの満足度とは別に、できるだけ顧客を囲い込もう、囲い込もうとしてきたこれまでのIT業界へのアンチテーゼともいえる。その意味でも、今このトレンドを見逃すわけにはいかない。

 ASPに可能性を見出している、さまざまなIT企業に話を聞いた。逆にASPに疑問を投げかける声も聞いた。日本より一歩先に立ちあがった米国のASP業界の最新事情も取材した。これから約半年にわたって、All

About ASPをレポートする。今まさに動いているものを“走りながら書いていく”ので、どういう展開になるかは私にも分からない。もし読者の間で“こういう点はどうなのか”といった疑問や質問などあれば、ぜひお寄せいただきたい。できる限りレポートの中身に反映していきたいと考えている。ペーパーより時宜性、双方向性に優れるWebマガジンの特性を生かして、読者の方々との“セッション”を楽しめればと思う。

 では、始めよう。ASPの世界へようこそ。

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