連載
» 2006年02月15日 12時00分 公開

アリの生態にみる自己組織化のルール自己組織化プロジェクトの育て方(2)(3/3 ページ)

[山根圭輔,アクセンチュア]
前のページへ 1|2|3       

自己組織化のポイントを大火事プロジェクトへのアクションに当てはめてみると……

 さて、実際に大火事プロジェクトに対して取ったアクションを以上の観点から吟味してみましょう。

朝は遅刻厳禁:バラバラに出社し、深夜まで仕事をする、という習慣をやめさせました

1. 大きさのそろった『粒』をできるだけ増やすこと

2. 『粒』と『粒』との連携は可能な限りシンプルにすること

3. 『粒』と『粒』との連携方法に例外をなくすこと



 3つ全部に当てはまります。

 働く時間帯という『粒』、働く人という『粒』、それぞれの大きさをそろえ、遅刻をしないという実績が『均質的な時間帯という粒』の量を増やします。もちろん、例外はできる限りなくします。

朝のスタートアップミーティングと夕方のラップアップミーティングの実施:定刻に始まり、きっかり15分で終わる朝/夕のチームミーティングを、1日も漏れずに行うようにしました



 これも、3つ全部に当てはまります。

 ミーティングという、だらだらとしがちなものの『粒』をそろえ、毎朝・晩という回数で『粒』を増やしました。毎日スタートアップミーティングでは、ホワイトボードに今日のToDo一覧を書き込み、それを印刷して各自受け取ります。ラップアップミーティング時にそれを持ち寄って、終わったかどうかの進ちょく確認をします。このような非常にシンプルな連携を保つよう心掛けました。もちろん、ToDoという『粒』の書き込みに例外はありません。

WSS(Windows Sharepoint Services)を導入し、情報を一元化:WebポータルアプリケーションであるWSSを導入して、情報を一元管理しました。進ちょく/仕様/課題/障害管理データベースはここに作りました


進ちょく/仕様/課題/障害管理で必要とされる項目を必要最低限に:複雑になりがちなこれらの管理情報項目を大幅に削減しました。進ちょく率などは、85%完了、といった細かな管理を一切やめ、未着手(0%)、作業中(50%)、完了(100%)、中止のみとしました


進ちょく/仕様/課題/障害管理で必須項目はすべて最新であるように徹底:管理情報項目を最低限のものにする代わり、それらの項目は絶対に漏れがなく最新ステータスであるよう、徹底しました


課題/障害管理データベースに、どんな問題でもとにかく起票するよう徹底:課題や障害の起票ルールを最低限とし、とにかく起こったことはすべて起票するように全員に徹底しました



 もちろんこれらも、3つのルール全部に当てはまります。WSSという1ルールの仕組みを使うことで、大きさのそろった『粒』を大量に増やせます。ステータス項目等はなるべくシンプルにすることが『粒』と『粒』の連携のシンプルさにつながります。最新のステータス、漏れがない登録を保つことは、まさに『粒』と『粒』との連携方法に例外をなくすために行ったことでした。


 このように、実際のプロジェクトに当てはめてみると、意外とアリや粘菌の集団との共通点が見えてきます。当然ながら、これらはすべて『プロジェクトの自己組織化』というパターンが浮かび上がるために行ったものでした。

 ずいぶん、強引な『粒』の解釈だなと思われた方も多いかと思います。この『粒』の話をしてよく勘違いされるのが、『粒』=作業タスクと固定化してとらえられることです。もちろん、作業タスクも1つの『粒』として見ますが、それだけではなく、あらゆるものを『粒』としてとらえられないかと考えていくことが、非常に大きなポイントです。

 次回は、この『粒』のとらえ方を実際のプロジェクトに、より大きく広げていきます。また、こういった考え方が、実はアジャイル開発方法論のスクラムやエクストリーム・プログラミングが目指すものと同じである、ということを説明していきたいと思います。

筆者プロフィール

山根 圭輔(やまね けいすけ)

アクセンチュア株式会社 金融グループマネージャー。主に開発方法論・テクノロジアーキテクチャ・プロジェクトマネジメント分野を担当。東京工業大学生物工学科・東京大学大学院生化学専攻出身。分子細胞学や生物学の知識を組織ネットワークやプロジェクトマネジメントに応用することを模索中。



前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ