本プロジェクトで「やる」ことが決まれば、次は「顧客に機能を捨てさせる」ことを考えなくてはなりません。
なぜならば、たいていの顧客は「機能はあればあるほどよい」と思うことが多く、システムは「結果として役に立たない機能が満載」になる可能性が高いからです。
また、役に立たない機能で、しかも技術的には難しいことの実装が重なると、プロジェクトに大きな支障をきたします。
では、どのようにすれば「顧客に機能を捨てさせる」ことができるのでしょうか。ここで重要なのは、「その機能を捨てさせるためには、一段上位から考える」ことです。
下の図1を見てください。
全体の中での割合や変化率によって、次のように考えるべきなのです。
1%未満→ | ないものとして考える |
---|---|
5%程度→ | あるものとしてとらえるかを検討 |
10%以上→ | あるものとして考える |
例えば、「ある帳票が追加で必要である」との要求が顧客からあったとします。この場合、帳票の必要性の是非についてのみ議論すると、「この帳票を使う人はいる」「いや、それでも使う頻度は少ないはずだ」などと、話がまとまりません。
そこで、「このサブシステムにはこの帳票が本当に必要か」と、問題を一段高いところから眺めることで、「実は、ほかの帳票で代用可能だ」「ほかの帳票と比べて、優先度が低いので後回しにしよう」など、顧客に冷静に判断してもらうことが可能になります。
さらに、「いま議論している対象の重要度はどのくらいか」を判断するための枠組みとして、1・5・10ルールというものがあるのです。
顧客がなかなか要求を捨ててくれない場合、「全体の中で、使用(出現)頻度は何%くらいですか?」と聞いてみてください。1%以下であれば、顧客も捨てることをためらわないはずです。逆に、10%以上の場合、この要求をのまなければ後で大問題となる可能性が高く、要求を採用すべきであるといえます。
さて、ここまでくれば、要求の明文化と合意は目前です。しかし、ちょっと待ってください。最後に大事なことがあります。それは「変更管理をきちんと行う」ことです。変更管理が正確に行われていなければ、せっかくの努力が水泡に帰してしまいます。
下には変更管理の一般的手順を示します。この中で最も大切なのは、「変更要求の評価」と「変更要求の認可」です。すなわち「この変更は重大な変更なのか」「この変更は誰が許可するのか」を判断できるようにしっかりと手順にしておくことです(図2)。
小さな変更であれば、現場の判断でも問題ないかもしれませんが、大きな変更であれば上長や責任者に判断を仰ぐ必要があります。この選択を間違うと、最後に「鶴のひと声」で仕様がひっくり返ることがあるのです。
変更管理の重要性を認識することが、明文化と合意の鍵となることを、忘れてはいけません。ここまでのプロセスをまとめると、次のような図3になるでしょう。
安達 裕哉(あだち ゆうや)
トーマツ イノベーション株式会社 シニアマネージャ
筑波大学大学院環境科学研究科修了後、大手コンサルティング会社を経てトーマツ イノベーション株式会社に入社。現在、主としてIT業界を対象にプロジェクトマネジメント、人事・教育制度構築などのコンサルティングに従事する。そのほかにもCOBIT、ITサービスマネジメント、情報セキュリティにおいても専門領域を持ち、コンサルティングをはじめとして、企業内研修・セミナー活動を積極的に行う。
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