しかし、見える化とは本当にそのようなものなのでしょうか。記録や文書を承認することが目的ではなかったはずです。ここで一度原点に立ち返りましょう。
皆さまにもお考えいただきたいと思います。プロジェクトの見える化といいますが、プロジェクトの何が見えれば、トラブルの予兆が見えるといえるのでしょうか。
「何が見えればいいって……。やっぱりレビューの記録じゃないかな」
「いや、顧客とのやりとりではないだろうか」
「必要な文書の作成や手続きが、きちんと取られているかだろう」
いろいろなご意見があると思います。どれも間違いではありません。しかし、ここで次の質問をしたいと思います。
「トラブルとは何のことを指しますか?」
このことを、少し考えてほしいと思います。
こちらもいろいろなお考えがあるでしょう。この質問でお分かりかもしれませんが、プロジェクトの見える化を行うためには、「トラブルとはいったい何を指すのかを定義」しなければならないのです。
トラブルとは何かを知らなければ、また、トラブルの予兆がどのようなものなのかを知らなければ、プロジェクトの見える化は不毛な記録との戦いになってしまうでしょう。
忙しい現場は、何とか報告の網の目をかいくぐって、楽に仕事が進められるようにするでしょう。
まして、報告すれば自分が怒られるかもしれないことを進んで報告するプロジェクト管理者は少ないと思います。
それでは、どのようにすればプロジェクトの見える化を進めることができるのでしょうか。以下にその手順を示します。
1〜4の手順を踏むことで、プロジェクトにおいて見なければならないポイントが明確になり、プロジェクトにおけるトラブルの早期発見と対策を行うことができるようになります(図1)。
次回は、トラブルの予測、予防、発見、対応の具体的なポイントを簡潔に述べていきたいと思います。
安達 裕哉(あだち ゆうや)
トーマツ イノベーション株式会社 シニアマネージャ
筑波大学大学院環境科学研究科修了後、大手コンサルティング会社を経てトーマツ イノベーション株式会社に入社。現在、主としてIT業界を対象にプロジェクトマネジメント、人事・教育制度構築などのコンサルティングに従事する。そのほかにもCOBIT、ITサービスマネジメント、情報セキュリティにおいても専門領域を持ち、コンサルティングをはじめとして、企業内研修・セミナー活動を積極的に行う。
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