“仮想化”ではアセスメントと動作検証が大切特集:実用フェイズに入った仮想化(2)(2/2 ページ)

» 2009年09月07日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]
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リソース集約化には課題も

――仮想化は「全社のITリソースを集約して、最適に配分できる」ことがメリットとしてうたわれますが、実際にはどのレベルのリソース集約が行われているのでしょうか?

小島氏 全社で1つのリソースプールを作って、動的に配分する方法が最もITリソースの効率活用できるはずですが、その場合にはITコストをどの部門が負担するのかという問題が出てきます。現状では、年間のIT予算やコスト配賦に沿って、リソースプールも別々になっている例が多いようです。

 これは管理体制の面にも理由があります。情報システム部門の管理者はスーパーアドミニストレータとして存在しますが、割り当て済みのリソースの面倒を見る管理者が各事業部、各部門ごとに置かれることが多いようです。縦割り組織の中で、ITリソースの中央集権化を進めると、承認やオペレーションなどでいろいろとややこしい話が出てきてしまうので、業務上の意思決定を行う単位でリソースを切り分ける形ですね。

 つまり、情報システム部門が各部門にリソースを割り振って、それに見合ったコストを負担してください、割り振ったリソースの中は自由に使ってください??というパターンが多いようです。

管理製品は「これからに期待」

ALT エンタープライズ事業本部 マーケティング統括部 プロダクトマーケティンググループ 真木吉人氏

――仮想化では運用管理が大切になるといわれています。現状の仮想化ソフトの管理機能をどのように感じられていますか?

小島氏 VMWareの場合はかなり細かいコンフィギュレーション設定ができます。例えば、A社のサーバにVMWare製品を載せて、B社のストレージをつなげるとデフォルトでは十分なパフォーマンスが出ないので、設定を変えてストレージへのアクセスI/Oの部分を15%上げる??といったチューニングが可能です。あるいは、VMware vSphere 4.0という新しいバージョンでは、監視機能が最初から包含されています。仮想マシンのCPUやメモリ、ディスク容量に加えて、ハードウェアの健全性??例えば、ファンが壊れていないか、二重化されている電源装置のどちらかが壊れていないかといった監視が標準機能として付いています。

真木氏 現状では、VMWareならvCenter、Hyper-VならSystem Centerというように、仮想化ソフトウェアに付随ないし同一ベンダが提供するツールが適しているでしょう。各社とも管理機能に力を入れており、日ごとに機能が改良されていますから、それに期待することはできるでしょう。

――仮想化ソフトウェアを併用しているユーザーが多いというお話でしたが、複数の仮想環境があると管理業務が煩雑になりませんか?

小島氏 仮想化ソフトウェアを1つに統一できればTCO削減にはなると思いますが、予算などの制約から併用は避けがたいと思いますし、その場合の管理業務の煩雑性が増すことは否めないでしょう。しかし、仮想マシンを作って消して、コピーしてという作業は、開発環境では頻繁にあるかもしれませんが、本番環境ではあまりないでしょう。逆にその本番環境のハードウェアをメンテナンスするときに、サービスを停止したり、代替環境を用意したりといった手間が大幅に軽減されるというメリットとのトレードオフのなかで考えることが大切じゃないでしょうか?

忘れてはならないバックアップ

――仮想マシンと物理マシンを統合管理したいというニーズはありませんか?

真木氏 あります。統合管理ツールに仮想環境のデータを飛ばして、一元的に見られるようにする形ですね。キャリア系企業のように大規模なミッションクリティカル・システムを運用されているお客さまですと、標準のオペレーションサポートソフトウェアがあって、そこに情報を集約しなければならないという場合があります。この場合は、SNMPトラップか、シスログ、あるいはWMIイベントなど、何らかの方法でデータを取り出すことになります。そのように手作りすれば統合管理も可能ですが、やはりお金が掛かりますね。

――仮想化プロジェクトでよく見られる問題は何でしょうか?

小島氏 意外によくあるのが「バックアップのことを考えていなかった」というケースですね。仮想環境では既存環境と同じバックアップ装置が使えるとは限りませんし、最適なバックアップ方法が変わってくるかもしれません。ですので、仮想化プロジェクトでは、RFPにバックアップに関する要求を入れておくことをお勧めします。

真木氏 仮想環境を運用するうえで、バックアップは必須だと思います。物理環境であればサーバごとにディスクが置かれますが、仮想環境はディスクを共有するので、そこで障害が起こると全部がダウンしてしまうからです。ですからバックアップ頻度が同じでも、物理環境と仮想環境ではサービスレベルが変わってしまうのです。

小島氏 ストレージ・ベンダも仮想化ソフトウェア・ベンダと連携して、新しい製品、新しい機能を続々と市場投入していますので、お客さまはバックアップやリストアの要件をまとめていただければ、各仮想環境ごとに最適なバックアップ/リストア手法をご提案できると思います。

ランニングコストを踏まえた導入計画を

――仮想化を導入を成功させるポイントは何でしょうか?

藤井氏 仮想化にはサーバ統合によるコスト削減、迅速な仮想マシンのデプロイ、可用性の向上など、いろいろなメリットがありますが、導入の際には自社の目的は何かを見据えて、将来のビジョンを描くことが大切だと思います。

真木氏 イニシャルコストばかりに気を取られて単純に安いものを選ぶと、実は高い買い物になってしまう場合があります。ランニングコストを踏まえた導入計画を立案したお客さまはよい結果が出ているように思います。機器を買い替えた方が安上がりという場合もあり得るので、そうした検討も必要です。

 そのためにはアセスメントや技術検証が不可欠です。製品を購入してしまってから動くと思っていたものが動かなければ手遅れですし、パフォーマンスに関する情報は時々刻々と変わりますから、ぜひ実際に検証することをお勧めします。

小島氏 技術検証については、付き合いのあるSIerがいればそうしたところとよく連携を取って、作業を進めるのがよいでしょう。そのSIerさんが従来型のソフトやハードは分かるけれど、仮想化には詳しくないというのであれば、わたしどもにご相談いただければ、ご一緒して最適なやり方をご提案いたします。

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