
タイムカードの集計作業や従業員の代理打刻に毎月頭を悩ませてはいませんか? あるいは、ICカードの発行や紛失対応といった煩雑な管理業務に、本来の業務時間を奪われてはいないでしょうか。
これらの課題を解決する有効なソリューションとして、「生体認証」を有効に活用した勤怠管理システムも多くの企業で導入され始めています。生体認証は従業員への利便性・容易性だけでなく、なりすましによる不正防止、管理部門の業務負担軽減などにも寄与し、企業全体の生産性向上に貢献する可能性があります。
本記事では、勤怠管理に生体認証が求められる背景から、具体的な認証方式の種類と特徴、導入メリット、そして自社に適したシステムを選ぶための比較ポイントまでを、専門家の視点から網羅的に解説します。この記事が、勤怠管理のDX化を成功させるための確かな一歩につながれば幸いです。
この1ページで解決!勤怠管理システムの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントを理解する|おすすめ54製品をタイプ別に比較
目次
なぜ今、勤怠管理に「生体認証」が求められるのか?
これまで主流だったタイムカードやICカードによる勤怠管理は、多くの企業で限界を迎えつつあります。その背景には法改正への対応や働き方の多様化といった差し迫った理由と、旧来の手法が抱える根本的な課題が存在します。
タイムカード、ICカードが抱える3つの限界
従来の勤怠管理方法には、主に3つの解決が難しい課題があります。
- 不正打刻のリスク
- 管理・運用の手間とコスト
- 打刻漏れや記録ミスの対応
不正打刻のリスク
タイムカードやICカードは、本人以外の第三者が比較的簡単に打刻できてしまいます。いわゆる「代理打刻」や「なりすまし」と呼ばれる不正行為は、企業の人件費に直接的な損害を与えるだけでなく、従業員間の不公平感を生み出し、職場環境の悪化を招くリスクがあります。
管理・運用の手間とコスト
ICカードは従業員側の「運用」こそシンプルですが、管理側の観点では従業員の入退社のたびに発行・回収作業が発生します。紛失や磁気不良が起こればその都度再発行の手間とコストがかかります。
紙タイムカードは月末に手作業で集計する必要があり、これが担当者の大きな負担になっているケースがとても多くあります。これらの管理コストは目に見えにくいですが、確実に企業の利益を圧迫します。
打刻漏れや記録ミスの発生
「カードを忘れた」「押し間違えた」といったヒューマンエラーはどうしても発生します。そのたびに管理者による確認や修正作業が必要となり、正確な労働時間の把握を困難にしています。
【法的背景】「労働時間の客観的把握」義務化への対応
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、企業は従業員の労働時間を「客観的な方法」で把握することが法的に義務付けられました。これは使用者が自ら現認するか、タイムカード、ICカード、PCの使用時間といった客観的な記録を基に、労働時間を管理しなければならないということです。
しかし、前述の通りタイムカードやICカードには不正のリスクが伴います。この点で個人の身体情報で本人を識別する生体認証は、他人による代理打刻は原則としてできないといえるため、労働時間を客観的かつ正確に記録できる、より確実性の高いソリューションの1つと言えます。
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不正打刻がもたらす企業リスクとは
「少しぐらいなら……」という軽い気持ちで行われる不正打刻ですが、企業にとっては大きなリスクを内包しています。本来支払う必要のない残業代が発生する「人件費の損失」はもちろん、労働基準法で定められた上限(36協定)を超える時間外労働が隠蔽され、過重労働につながる可能性も否定できません。
万が一、労働基準監督署の調査が入った際に客観的な記録を示せない場合、是正勧告や罰則の対象となる恐れもあります。生体認証の導入は、こうした労務リスクから企業を守るための有効なセキュリティ対策でもあるのです。
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勤怠管理における生体認証の仕組みと種類
生体認証(バイオメトリクス認証)とは、一人ひとり異なる身体的な特徴や行動的な特徴をパターンとして識別し、本人確認を行う仕組みです。
勤怠管理のシーンでは主に4種類の生体認証が活用されています。それぞれの特徴を理解し、自社の環境に合った方法を選択することが重要です。
【比較表】4大生体認証(顔・静脈・指紋・虹彩)を徹底比較

| メリット | デメリット・注意点 | |
| 顔認証 |
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| 指紋認証 |
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| 静脈認証 |
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| 虹彩認証 |
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非接触か? 精度か? 自社に合った認証方式の選び方
どの認証方式を選ぶべきかは、企業の業種や働く環境によって異なります。
オフィスワーク中心の企業
PCやタブレットの内蔵カメラを活用できる顔認証は手軽な選択肢として人気があります。従業員が業務に使うPCでそのまま打刻でき、また出張時・外出先やテレワーク時に別途スマートフォンで対応できるシーンも多いです。
工場・建設現場・医療機関
手袋を着用したり、手が汚れたりする環境では顔認証や手のひら静脈認証が有力な選択肢です。特に衛生管理が重視される職場では非接触で認証できる顔認証が評価されています。
高いセキュリティが求められる拠点
データセンターや研究開発部門など厳格な本人確認が求められる場所では、偽造が困難で認証精度が高い静脈認証や虹彩認証、あるいは複数の手段を併用して認証する方法が勧められます。
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生体認証を踏まえた勤怠管理システムを導入する6つのメリット
勤怠管理に生体認証を導入することは、単にタイムカードを置き換える以上の多岐にわたるメリットを企業にもたらす可能性があります。不正防止という守りの側面と業務効率化という攻りの側面の両方から、その効果を見ていきましょう。
メリット1:代理打刻などの不正防止を期待できる
大きなメリットは本人による正確な打刻・記録の実現、端的には本人以外の打刻が困難になることによる不正打刻の抑制効果です。指紋や静脈といった身体的特徴は、ICカードのように他人に貸し借りができません。これにより、給与の過払いを防ぎ、従業員の間に公平な勤務環境を構築する一助となります。
メリット2:ICカードなどの発行・管理コストを削減できる
従業員の入退社のたびに発生していたICカードの発行・回収・管理といった手間が不要になります。カードの紛失や破損による再発行コストもなくなり、人事・総務担当者の見えない負担を大幅に削減。本来注力すべきコア業務に時間を充てられるようになります。
メリット3:打刻から勤怠データ集計、その後までの自動化を目指せる
SaaS型の勤怠管理システムと連携すれば、打刻された勤怠データはリアルタイムでクラウド上に集計されます。勤怠集計が自動化されることで、これまで手作業で行っていたタイムカードの転記やExcelなどへの入力作業がなくなります。締め日近辺の業務が劇的に効率化します。
メリット4:従業員の打刻漏れや管理者の負担を軽減できる
生体認証はカード忘れなどに由来する打刻不能がありません(機器や環境要因による認証失敗の可能性はあります)。また、システムによっては打刻漏れがあった場合に本人や管理者に自動で通知を送る機能もあり、修正の手間を最小限に抑えられます。従業員は勤務記録の手間を軽減でき、管理者は確認作業の負担から解放されます。
メリット5:正確な労働時間把握でコンプライアンス強化につながる
客観的で改ざんが困難な勤怠記録は、労働時間の実態をより正確に把握することにつながります。これにより36協定で定められた残業時間の上限管理や、長時間労働の是正といった、法令順守のための的確なアクションが取りやすくなります。
メリット6:非接触認証により衛生的な運用が実現できる
顔認証や手のひら静脈認証といった非接触の認証方式を選べば機器に触れる必要がありません。不特定多数の従業員が同じ端末に触れることに抵抗がある場合や、衛生面を重視する職場へも安心して導入できます。認証もスムーズで出退勤時の混雑緩和にも貢献します。
【失敗しないために】生体認証に対応する勤怠管理システムの選定ポイント
自社に適したシステムを導入するためには、いくつかの重要なチェックポイントがあります。価格や知名度だけで選ぶのではなく、自社の課題や環境と照らし合わせながら、多角的に比較検討することが成功につながります。

ポイント1:認証方式は「利用環境」と「従業員の働き方」で選ぶ
前述の通り認証方式には一長一短があります。例えば屋外作業が多い建設業で指紋認証を選んでも、手袋を外す手間がかかったり、雨や泥でうまく認識できなかったりするかもしれません。
まずは、オフィス、工場、店舗といった主な利用環境を想定し、それぞれで安定して運用しやすい認証方式を見極めることが重要です。また、直行直帰やリモートワークの従業員が多い企業では、スマホのGPS機能やPCのWebカメラ連携で打刻できるかどうかも併せてチェックするとよいでしょう。
ポイント2:既存のシステム/給与計算などと「連携」できるか
勤怠管理のデータは、会計システム、給与計算システムなどと連携させてこそその効果を高めることができます。
打刻データをCSVで出力し、手作業で給与計算ソフトで取り込むような連携シーンも一般的ですが、手作業があるのでは業務効率化の効果は限定的です。近年であれば、API連携などによって勤怠データを「自動」で給与計算ソフトへ反映できる製品が勧められます。freeeシリーズやジンジャーシリーズなど業務機能別にシリーズ化されている製品群であれば、連携性がはじめから考慮されていると推測されます。「連携の簡単さ」の面で効果が見込めます。
また生体認証で本人確認がより確実・簡単になることから、ICカード型から刷新する入退館のようなシステムと連携したい要望も多くあることでしょう。
ポイント3:導入・運用コストは「総額」で比較する
コストを比較する際は、月額のライセンス費用だけでなく、初期費用や専用の認証端末の価格も必ず確認しましょう。
一見、月額料金が安くても、高額な専用機器の購入が必須な場合もあります。無料トライアルを用意する製品であればその期間を遠慮なく活用して、使い勝手と合わせて費用対効果を総合的に評価することが大切です。
ポイント4:マルチデバイス対応か(PC・スマホ・タブレット)
多様な働き方に対応するためにはマルチデバイス対応も検討項目です。昨今のクラウド型製品ならば大抵は「スマホでも、出先でも扱えます」とする基本機能は備えています。しかし、オフィスの入り口などに設置する専用端末、従業員が持つスマホや自席のパソコン、共有のタブレットなど、様々なデバイスから「生体認証とともに打刻できるかどうか」は確認が必要です。従業員が場所を選ばずに働ける環境を整備したい企業は特に、忘れずに深く確認しましょう。
ポイント5:認証機器の対応・提供形態を確認する
勤怠管理システムによって、生体認証の実現方法が異なります。PCやタブレットの内蔵カメラで対応できる手軽なものもあれば、専用の認証リーダー(指紋リーダーや静脈認証装置など)の購入が必要なものもあります。専用デバイスが必要な場合はその機器の費用や推奨スペック、保証期間なども忘れずに確認しましょう。
ポイント6:セキュリティ対策とサポート体制は十分か
生体情報は極めて重要な個人情報です。そのため、システム提供元のセキュリティ対策(データの保存体制や暗号化、サーバ管理体制、サービス解約時の対応など)は必ず確認しましょう。また、導入時や運用中にトラブルが発生した際に迅速に対応してくれるサポート体制が充実しているかも、安心して長く利用するための重要な選定基準となります。
生体認証対応のおすすめSaaS型勤怠管理システム5選
日本国内での導入実績が豊富にある生体認証対応のSaaS型勤怠管理システムを5製品厳選して紹介します。(製品名 abcあいうえお順/2025年7月時点)
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