テレワークなどの多様な働き方が浸透してきた近年、勤怠管理業務はより煩雑になり、作業の負担も大きくなっています。Excelなどの表計算ソフトや、タイムカードでの勤怠管理に限界を感じている中小企業の担当者も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、特に「業務効率化」「コスト削減」「法令順守」という3つの視点に基づき、“無料”で始められる勤怠管理システムのおすすめ製品(全18製品/2025年3月時点)とともに、基礎機能とその効果、システム導入のポイントをじっくりと解説していきます。
機能で比較「勤怠管理システム」おすすめ製品一覧
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この1ページで解決勤怠管理システムの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントは? おすすめ54製品をタイプ別に比較
目次
無料で勤怠管理を行う主な方法
勤怠管理とは、従業員ごとの出退勤時刻や残業時間などを正確に把握し、管理することを指します。勤怠管理システムやタイムカード/タイムレコーダーなどを活用して行うのが一般的です。ここでは、無料で勤怠管理を行う主な方法についてご紹介します。
オススメ無料の勤怠管理システムを利用する
無料で使える勤怠管理システムは、昨今主流であるクラウド型/SaaS型製品を例に大きく分けると以下の2つがあります。
- 無料プランを用意し、特定の条件を満たせば月額利用料無料で使えるもの
- 無料トライアル期間のあるもの
無料の勤怠管理システムで利用できる主な機能として、打刻機能、データの自動集計・出力などが挙げられます。
ICカード打刻機、PC、スマートフォンなどで従業員が入力した勤怠情報をシステムに取り込み、労働時間や残業時間、出勤日数を集計することで、従業員の勤怠状況の一元管理が可能になります。製品によっては、予実管理、有休・残業申請、給与計算システムとの連携が可能なツールもあります。
△Excelで勤怠管理表を作る
Microsoft Excelの表計算ソフトウェアで勤怠管理表を作成することによって、無料で勤怠管理ができます。エクセルで作成する際は、関数やマクロを活用します。自社で勤怠管理表を作成しなくても、すでにマクロや関数が設定されているExcel用テンプレートを活用するのも手軽な方法です。しかし手作業の工程がまだ多いため記入ミス・転記ミスや属人化のリスクを解消しにくく、データの一元化や活用にやや制限があることで、確実性の向上と業務効率化に向けた課題は根深く残ります。
「Excelで実施する勤怠管理の仕方」についてはこちらの記事も参照ください。
参考勤怠管理をExcelで行う方法|「無料」で勤怠管理表を自作する手順とポイントを詳しく解説
△○グループウェアに付属する機能を活用する
スケジュールや業務の情報共有やコミュニケーションに活用できるグループウェアを導入している企業も多いでしょう。グループウェアに付属する機能を活用することでも、無料で勤怠管理ができる場合もあります。既に目的を満たす機能を備えたツールを活用しているのであれば、「すぐ」「大きな出費なく」対策できる手段となるでしょう。
グループウェア付属の勤怠管理機能では「出社」「外出」「戻り」「退社」などの一般的な打刻データを記録・集計できます。月、年ごとの就業実績集計や、CSVでデータをダウンロードできるものもあります。
×タイムカードから手作業で転記・集計する
タイムカード/タイムレコーダーから手作業で転記、集計する従来型方法は、基本無料で行える勤怠管理方法の1つです。ノートに勤怠管理表を書き、タイムカードから出退勤情報を転記し、労働時間や残業時間を集計します。
もっともこの方法は、手間と時間がかかる「旧来の方法」であるのはご存じの通りです。目に見えやすい月額利用料や開発費のようなコストこそ発生しませんが、タイムカードに記載された出勤時刻・退勤時刻を確認するだけでは残業や休日出勤などの時間外労働かの判断なども困難で、シフト表で計画されている所定労働時間や出勤日と照らし合わせながら手作業/目検で計算・集計を行う必要があること、また会社として従業員の労働日数や時間外労働などの労務状況を適切に把握できないことが問題です。
この業務に時間や手間が過度にかかれば人件費に響きますし、この作業に管理者やマネージャー、担当者が忙殺されることで売上機会、ビジネスチャンスを失う可能性もあります。転記ミスなどのヒューマンエラーが発生する可能性、不正打刻などの可能性、メンタルヘルス対策や労働関連法順守のような会社・従業員双方の労働環境を守るための対応がおそろかになる課題も根強く残ります。
人的エラー・時間・コストの増加、法令順守のリスク、効率的な自動化ツール/システムの普及を理由に、このようなアナログ方法から、デジタル型方法/勤怠管理システムなどへの早急な移行が勧められます。
勤怠管理システムを選ぶ際の3ステップ
勤怠管理システムの選定では大まかに分けて3つのステップがあります。それぞれ「業務課題の洗い出し」「無料システムで試験運用」「有料プランへのアップグレード判断基準」です。これらを順に解説します。
業務課題の洗い出し
まず始めに行うべきは、自社における業務課題の洗い出しです。具体的には、現状の勤怠管理で何が大変か、何時間の手間がかかっているか、法令違反のリスクがどの程度あるのか、などを見つけ出すことが重要です。これにより導入するシステムでどのような問題を解決すべきなのかが明確になります。具体的な実行方法は「要件定義の実施方法と考え方」もぜひ参照ください。
無料版(無料プラン/無料トライアル)システムで試験運用
次に、無料版の勤怠管理システムで試験運用してみましょう。無料版ならではのメリットを最大限に活用しながら、必要な機能の確認や操作感の把握を行います。無料プランでも、「出勤・退勤の打刻管理」「基本的なレポート作成」など、必要最低限の機能は揃っています。これらを活用し、システムが期待通りの効果をもたらすかどうかを確認しましょう。
おすすめIT製品の「無料版」は、なぜ無料なのか、どこまで無料で使えるのか
有料プランへのアップグレード判断基準
最後に無料プランの運用を通じて得られた使い勝手・情報を基に、有料プランへのアップグレードを検討します。以下の3つの観点が重要となります。
- データ保存期間の不足解消:労働基準法により、勤怠データは5年間保存する義務があります。無料プランでは保存期間が短いものが多いため、この要件を満たすためには有料プランへの移行が必要となることがあります。
- 従業員数の増加:無料プランにはユーザー数の制限があります。ユーザー数が増えた場合、即座に有料プランへ移行できるよう計画しておきましょう。
- サポート体制の強化:無料プランでは、サポートがメールのみや、そもそも提供されないことがあります。勤怠管理システムの運用には、疑問点の解消やトラブル時の対応など、適切なサポートが必要となります。
無料の勤怠管理システムを選ぶポイント
エクセルやタイムカード/タイムレコーダーでの勤怠管理は手動作業が多くあるため、手間がかかったりミスが起こったりというリスクがあります。ミスはもちろん、不正防止をするためには、勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。
ここでは、無料で始められる勤怠管理システムを選ぶ際のポイントについて解説します。
- 利用可能なユーザー数(アカウント数)
- 利用可能な機能の内容
- データ保存期間
- サポート内容と範囲
- 広告表示の有無
- 導入形態
利用可能なユーザー数(アカウント数)
まずは利用可能なユーザー数(アカウント数)を確認しましょう。ユーザー数は「従業員数」と考えて大丈夫です。一般的に、無料で勤怠システムを利用する場合はユーザー数に制限・上限がある傾向にあります。利用可能なユーザー数の上限はシステムにより異なり、数人から100人程度まで幅が広いため、現在の従業員数と照らし合わせて検討するとよいでしょう。
利用可能な機能の内容
有料プランと比較すると、多くの場合、無料プランは利用できる機能に制限があります。出勤・退勤の打刻機能などの基本機能は使えますが、そのほかの便利機能/自動化機能、他システムとの連携機能、レポート生成機能のような付随機能は有料プランで提供されるイメージです。
無料で利用できる機能の内容で自社の求める業務効率向上につながるか、の観点をじっくり確認しましょう。
データ保存期間
無料の勤怠管理システムでは、有料版と比べてデータの保存期間が短く、データを保存可能な容量も少なめとなる傾向にあります。出退勤時刻、休日出勤、欠勤の情報など、従業員の勤務状況をまとめた勤怠管理データは5年間(当面の間は3年間)保存する義務(労働基準法第109条)があります。勤怠管理システムのデータ保存期間(過去データの保存期間)は忘れずに確認しましょう。
無料版ではこれをカバーできないこともあります。自社の法令順守体制の強化を求めているのであれば、法令順守のための機能をふまえた別製品/有料版の検討が勧められます。
サポート内容と範囲
無料の勤怠管理システムは一般的に、サポート範囲が限られます。導入の際のサポート対応や、利用中の電話やメールでのサポートは有料となる、あるいはオプションとなる製品もあります。手厚いサポートには原則として料金が掛かると考えておくとよいでしょう。
無料プランでは、サポート範囲、制限を確認し、その上で使えそうかどうかを判断しましょう。不明点があれば遠慮なく製品のベンダーに問い合わせて回答を得るとよいでしょう。なお、無料プランではなく、「無料トライアル」を活用して「無料の範囲で試験的にスモールスタートして確認する」という考え方も有効です。
広告表示の有無
勤怠管理システムを無料で利用できる理由の1つとして、無料プランでは広告収入で運営費用を得ていることが挙げられます。
広告の有無はもちろん製品によって異なりますが、広告で無料プランを実現する製品は利用画面上に広告が表示されます。この場合、どこにどのように広告が表出されるのか、自社業務のうえでこれを許容できるか、業務に支障がないかどうかの確認は忘れず行いましょう。
これについては、上記と同様に「無料トライアル」を併用してみるのもよい方法です。無料トライアルは大抵の場合「有料版」を一定期間試用できるもので、有料版と無料版の違いを確かめられるでしょう。
導入形態
勤怠管理システムの導入形態には、「パッケージ型」「開発型」「クラウド型」の3種類が挙げられます。
- パッケージ型:ソフトウェアを購入し、自社のサーバやシステム、業務PCで利用する形態
- 独自開発型:自社に適したシステムを開発して利用する形態
- クラウド型:提供されるシステムをインターネット経由で使用する形態
上記のうち、無料で始められるのはクラウド型/SaaS型です(パッケージ型も可能性はありますが、昨今はより条件が限られるのでここでは除外して考えましょう)。
参考おすすめ記事クラウドシステムとは? クラウド型製品・サービスの種類と仕組み、ビジネス成果・導入メリットを分かりやすく解説
使いやすさ
勤怠管理は日次で行うため、実際に勤怠管理業務を行う社員だけでなく、他の社員にとってもストレスなく使いやすいものを選ぶこともポイントです。勤務時間の設定や日々の打刻操作がわかりやすく、使いやすいかということも口コミや導入事例などを見て確認しましょう。
無料プランのある勤怠管理システム4選
先述のとおり、無料で利用できる勤怠管理システムには、「特定の条件を満たせば、期間を問わずに完全無料で使えるもの」と「無料トライアル期間があるもの」の2種類があります。
まずは無料プランのある勤怠管理システムのおすすめ5製品(製品名 abcあいうえお順/2024年7月時点)を紹介します。