東京ビックサイトで1月28日、「ファイバーオプティクスEXPO」が開幕した。展示会場の一画には「FTTHゾーン」が設けられ、次世代のFTTHサービスに向けた機器が多く展示されている。中でも目立つのは、光波長多重による多チャンネル放送と1Gbpsのアクセス回線を実現するGE-PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)ソリューションだ。
1本の光ファイバーに通信と放送を同居させる“光波長多重技術”は、スカパー!の「FTTH放送」などで知られるようになったが、現在のサービスでは最大100MbpsのB-PON(Broadband Passive Optical Network))と組み合わせているのが普通だ。しかしFTTHを対象としたギガビットイーサネット規格「IEEE 802.3ah」のドラフト第3版が公表されたことで、各メーカーは仕様がほぼ固まったと判断。ドラフト仕様に準拠した製品の準備を進めている。なお、放送用の波長多重にはITU-Tの「G.983.3」という標準仕様が既にあり、将来的には、これらを組み合わせた高付加価値の光サービスが市場を形成すると期待されている。
たとえば住友電工は、放送と通信の端末を兼ねる「光受信端末」を出展した。3波多重(通信の上り・下りと放送)の場合、放送用と通信用の2つの終端装置(ONU:Optical Network Unit)が必要になるが、この端末は1台でまかなう。放送はRF出力のため、そのままCATVなどのSTB(セットトップボックス)に繋げればいい。
ただし、展示機はプロトタイプのため「単に通信用と放送用のONUを詰め込み、WDMフィルタを内蔵しただけ」という。光コネクタが2つ付いているのはこのためだ。
一方、古河電工が展示していた「光BroadCastシステム」は、B-PONからGE-PONへの移行期に適したソリューションだ。センター側はGE-PONだが、宅内装置は100Mbpsを上限として最大32世帯でシェアするという。「現在のように100Mbpsをシェアする形と比較すれば、かなり余裕が出る」(同社)。宅内機器のコストを抑えながら実効スピードを向上させ、さらに将来のスピードアップにも備えたシステムといえる。
日立製作所は、昨年10月に発表したGE-PONシステム「AMN1500」シリーズを使い、3波多重サービスのデモンストレーションを行っている。ブースに備え付けたカムコーダーの撮影動画を1.55マイクロメートルの波長に多重し、専用端末に表示したほか、3台のONUとPCを用いてIPv6マルチキャストを披露。計4台の端末でスムーズな動画を表示してみせた。なお、日立製作所は「2006年には、より家庭向けにフォーカスした製品を投入する」としている。
スカパー!とNTT東日本の話題が先行しがちだが、光波長多重はCATV局にも見逃せない技術だ。昭和電線工業ブースで参考出展しているのは、CATVサービス向けの「FTTH用光映像受信機」。関連会社の宮崎電線工業が開発した放送用のONUユニットで、同軸ケーブルにつなげば光経由の多チャンネル放送を受信できる。
外観から分かるように、受信機は戸外に設置することを前提としたアウトドア仕様だ。「家の中にONUを設置すると、そこから各部屋へ同軸ケーブルを引き回す必要がある。しかし戸外に設置すれば屋根のアンテナに接続して既存の宅内配線を利用できる」(同社)。
受信機には通信用のONUは内蔵していないが、内部の光コネクタからブロッキングフィルタを外せば通信用の波長を取り出すことができる。このため、ユーザーがブロードバンドサービスを希望したときは、改めて光ファイバーを宅内に引き込み、通信用のONUに接続すればいい。もちろん、GE-PONをサポートしている。
「ブロードバンドサービスで通信会社と競合しているCATVは多いが、同軸ケーブルでは今のところDOCSISの30Mbpsが上限。さらに高速なサービスを提供しようと思えばFTTHに行き着くだろう」(同社)。
これらのシステムは、いずれも年内にサンプル出荷や量産出荷が開始される見込みだ。検証期間なども考慮する必要はあるが、各ベンダーの意見は「来年もしくは再来年には市場が立ち上がる」という点で一致していた。少なくとも、今後2〜3年のうちに1Gbpsの回線速度を持ち、多チャンネル放送も提供できるFTTHサービスが登場することは間違いない。
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