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ハリウッドがDVDの高解像化を望む理由特集:次世代DVDへの助走(2/3 ページ)

» 2004年02月06日 23時55分 公開
[本田雅一,ITmedia]

高品質化、効率化が進むデジタル映画の制作現場

 両社の次世代光ディスクへの姿勢や考え方は、この連載の中で順に詳しくレポートする予定だ。今回はその序章として、最新のハリウッド映画制作現場の中で、デジタル映像技術がどのように使われているのかに触れておきたい。次世代光ディスクにおける、HDコンテンツの方向を暗示していると思うからだ。

 ご存じのように、現在、映画の多くはフィルムで撮影されており、デジタルシネマ向けのマスターやDVDなどのデジタルコンテンツ向けには、別途、テレシネ変換(フィルムをリアルタイムでデジタルデータに変換する処理)装置を通じてデジタル化する。

 テレシネ変換は、フィルムに表現された、映画監督の意図する“絵”をデジタル化しなければならず、映画監督自身が“カラーリスト”と呼ばれる色調整の専門家とともに、シーンごとに細かな調整を加えながら作業を進めていく。

 実際に家庭で映画放送を受信したり、DVD再生を行ったりする場合は、色温度が高く派手な色使いの受像器で再生されるため、必ずしも制作者側の意図した色で再生されるわけではない。しかし、少なくとも映像確認用の基準モニターの上では、きちんと本来の絵柄で再生できるようになっているのだ(従って基準モニターに近い特性の正しい色再現ができるプロジェクターなどを用いれば、映画館と全く同じ映像を楽しめることになる)。

 各シーンを細かく色調整するといっても、長編映画では大まかなものだろうと思っていたが、実際にはフィルムのロットや、同じフィルムでも製造上のムラがあり、コマごとに細かく色調整を必要とする場合もあるという。言い換えれば、映画制作をしている側は、それだけのコダワリを持って取り組んでいるわけだ。

 このテレシネ変換の行程で、通常はHDマスター、SDマスターの両方が同時に作られ、映画スタジオの関連会社のデータベースで管理される。実際にテレビ放映やDVDの製造を行うことになると、そのマスターをHDDやMOなどに収め、世界中にあるDVD製造会社や放送局などに引き渡される。

 近年は衛星回線を用いた配信システムを持っているところもある。Warner系のポスプロであるGlobal Digital Media Exchangeでは、全世界にあるDVD生産拠点にも映像データベースを置き、衛星回線を通じてデータベースの同期を行い、制作したデジタル映画のデータを効率的に流通させるシステムを確立しているという。

photo Global Digital Media Exchangeから、各種映像が全米に配信されている様子。デジタルコンテンツの放送は、すべて集中管理されている

 従って、どの国で発売されたDVD、どの国で放送される番組、すべては制作者側が意図している映像が流れるわけだ。このあたりのサプライチェーンは非常にシステマチックで、無駄は非常に少ない。

 しかし、映画制作者やポスプロの技術者たちは、現状のワークフローに満足しているわけではない。特に画質に関しては、飛躍的に向上する可能性が残されている。

HDコンテンツはまだまだ高画質になる

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