HD DVD陣営は、BDのノートPC用ドライブを開発することは困難だと話している。実際、それほど簡単なことではないだろうが、実際に開発は進めているのか? 進めているならば、現時点でのステータスはどうなっているのだろう?
「9.5ミリ厚のスリムドライブを開発している(記録型ではなくROM対応)。必要なパーツを、きちんと理想的に配置すれば9.5ミリ厚ドライブに収めることも可能だ。あとは需要の問題。PC用BD-ROMドライブの需要は、BD-ROMのソフトが登場した時に初めて発生する」。
つまり、PC向けドライブの登場に関しては技術的要素よりも、市場性の方がはるかに大きいということだろう。ではなぜ、ヒューレット・パッカードとデルは、BDFに参加することができたのだろう。彼らは光ディスクドライブベンダーではなく、PCへのBD-ROMドライブ搭載、HD DVDドライブ非搭載を約束しているわけでもない。 彼らは“Founders”にふさわしい光ディスク技術を持っているのか?
「BDFからBD規格のライセンスがすでに始まっている以上、何らかの技術的な貢献がなければFoundersには入ることができない。BDFに参加するためには、BDの発展に寄与する技術の持ち込みが必須だ。
HPとデルからは、PC向けアプリケーションに関する(詳しくは言えないが)提案があった。彼らの技術については、私自身、かなり懐疑的に見ていたが実際にはさまざまな技術を持っている。書き込みエラー時の代替処理やファイルシステムなど、PC分野で培われた技術が主だ。決して“技術を持たずにFoundersに参加した”わけではない」。
そうは言っても、CESにおける発表会(この時点ではFoundersへの参加は決まっていなかったが)において「HP+デルは、即ちPC用ドライブとしてBDが普及すること」と、HPとデル自身がマーケティング的な効果を強調していた。光ディスクドライブの消費量は、家電製品よりもPCの方が遙かに多いからだ。HPとデルのBDFの参加承認が、技術の持ち込みによるものだと信じる者はほとんどいないだろう。
「もちろんビジネス的なメリットも視野に入れてのことだ。+RWはこの2社が独占的に導入したことで、フォーマットが世界中に一気に広まった。同じ効果をもう一度という気持ちはある。半分はビジネス面で、BDの普及に貢献するだろうとの考えがある。しかし残り半分は技術面の貢献だ」。
ライバルと目されているHD DVDは、コーデックとしてH.264とWMV9に対応することが暫定ながら決定した。西谷氏はH.264をどう見ているのか?
「ソニーはH.264に対して以前から取り組んでいる。H.264が有効な分野ではこれを積極的に使っていくつもりだ。しかし、プレミアムコンテンツとして販売する映画のパッケージソフトはMPEG-2でなければならない。ハリウッド映画の流通関係者がMPEG-2の方が良いと言っているからだ。
パッケージ製品として付加価値を付けるためには、少なくとも放送レベルと同等か、それ以上のビットレートで記録しなければならないと、ほとんどの映画流通関係者は考えている。そして、BDにはそれを実現する容量がある。
しかし、そうではない(高ビットレートのMPEG-2記録が必須ではない)用途もある。そうした分野ではH.264が使われるだろう」。
では、“そうではない”分野においてH.264を使う可能性はあるのだろうか? また、将来の半導体技術の進化を考えると、いずれ記録型のBD-REでH.264がサポートされる可能性もあるように思えるが?
「BD-ROMに関しては現在、まさに仕様を決めているところであり、私の意見は差し控えたい。エンコーダーに関しても、現段階では何もコメントできない。しかし、仮に再生のみを考えてH.264デコーダを載せるとすると、コスト面ではかなり大きな負担になるだろう。2006年ぐらいにならなければ、ROMプレーヤーへの実装はコスト対効果においてリーズナブルにはならないからだ。
HD DVDとのもっとも大きな違いはコーデックだと考えている。容量が大きなBDならば、放送並みか、それ以上の高ビットレートで長時間のコンテンツを収めることができるからだ。無理にビットレートを下げる必要はない」。
一方、記録型のBD-REは今年前半に25Gバイト×2層へと進化し、搭載製品も遠くない将来に登場するようだ。またBDF陣営は、さらなる多層記録の可能性に関しても言及している。録画機向けのフォーマットは、後からでも上位互換で追加投入が可能だろう。論理的には12層まで可能なように仕様が定義されていると伝え聞くBDだが、将来の計画はどうなのか?
「まずは2層。しかし、研究開発レベルでは4層までの記録・再生に成功している。また、レーザーの強さと記録層の透過率から計算すると、理屈の上では最大8層まで記録・再生が可能だ。仮に現在、研究開発レベルで実現できている4層記録の製品が登場すると、100Gバイトを超える容量に達することになる」
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