ジュピターテレコム(J-COM)は4月14日、2003年度の業績と今後のサービスロードマップを発表した。ロードマップは基本的に前回の内容を踏襲しているが、CS再送信チャンネルのハイビジョン化、セットトップボックスの“マルチベンダー化”など、いくつかのアップデートがある。
挨拶に立った同社の森泉知行社長は、まず昨年度53億5100万円の純利益を出し、「設立後初の単年度黒字」になったことを報告した。2004年3月末現在のケーブルテレビ加入世帯数は、155万6100世帯と前年同期比11万4500世帯の増加。このうちデジタル多チャンネル放送は約10万世帯としている。
「新規加入者の半数以上がデジタル放送を選択するなど、出足は好調だ。しかし、放送サービスの増加率が一桁(7.9%増)というのは不満。今年は積極的にデジタル放送に取り組み、新規契約の増加とARPU(顧客平均単価)向上を狙う」(森泉氏)。
J-COM TV | J-COM Phone | J-COM NET | |
---|---|---|---|
2004年3月末 | 155万6100世帯 | 60万9800世帯 | 66万7000世帯 |
2003年3月末 | 144万1600世帯 | 39万5600世帯 | 53万2700世帯 |
純増率 | 7.9% | 54.1% | 25.2% |
同社は、2004年から2005年にかけて、PPV(ペイ・パー・ビュー)やVoD(ビデオ・オン・デマンド)、CS同時再送信チャンネルのハイビジョン化など、デジタル放送サービスの強化を進める。
まず、4月からPPVチャンネルを開始。センターに電話をしなくても、STBに搭載したRFリターン(内蔵ケーブルモデムによる上り回線)を使ってEPG画面から直接番組をオーダーできる「インパルス・ペイ・パー・ビュー」が特徴だ。
また、CS放送チャンネルのHDTV化は、映画専門チャンネル「スター・チャンネル」が第1号になる予定だ。「現在はインフラ側の準備を進めている段階」(J-COMの加藤徹事業開発統括部長)という。
VoDは、まず夏頃にJ-COM東京で試験サービスを行い、年末もしくは2005年の全国展開を目指す。試験サービスのコンテンツなど、詳細は明らかにされなかったが、少なくとも早送り・巻き戻し、一時停止などの操作が行える仕様になる見込みだ。
しかし、これら双方向サービスを提供するためには、STBの置き換えが必要になる。というのも、多くのデジタルテレビユーザーが利用している松下電器産業のSTB「TZ-DCH250」にはRFリターンの機能がないため。J-COMでは、4月から上位モデルの「TZ-DCH500」に置き換える作業を始めているものの、STBの供給量や価格が懸念材料だという。そこで、海外メーカーのSTBを導入する「STBのマルチベンダー化」を打ち出した。
「マルチベンダー化は、STBの供給量を補い、またなかなか価格が下がらない現状に対応するのが目的だ。6〜7月頃をメドに韓国や米国のメーカーが製造したSTBを導入していく。ただ、STBの種類が増えるとユーザーサポートの負担も増すため、マルチベンダー化と併せて“ユニバーサルなユーザーインタフェース(UI)”の実装を予定している」(加藤氏)。
また加藤氏は、前回の記者会見で明らかにした“録画機能付きのSTB”についても触れた。やはり詳細は未定ながら、「HDDを内蔵し、EPGによる“簡単予約”や“タイムシフト再生”を行えるものになる。2005年中には提供を開始したい」。
一方、J-COMはインターネット接続や電話サービスにも、いくつかの新サービスを加える予定だ。たとえば、マンションデベロッパーなどの要望に応えるため、2004年夏をめどに集合住宅向けのFTTBを開始する。現在のHFCを延長する形で光回線をビルに引き込み、構内配線にはイーサネットやVDSLを活用する。
もう一つはIP電話だ。現在のJ-COM Phoneと同等の機能を持つ「VoIPによるプライマリ電話サービス」を2005年に開始し、J-COM Phoneの未提供地域に導入する計画だという。さらに、無線LAN内蔵型ケーブルモデムの提供(夏以降)、ネットワークカメラを使ったセキュリティサービス(時期未定)などの項目が挙げられている(下表参照)。
新サービス | |
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J-COM TV Digital | ビデオ・オン・デマンド(VoD) DVR CSHDチャンネル ユニバーサル・ルック&フィール 高齢者向けサービス Tコマース Walled Gardenなど |
J-COM Net | ワイヤレスLANモデム ネットワークカメラ FTTB セキュリティサービス |
J-COM Phone | VoIP オプションパッケージ 一律料金サービス |
PC中心のインタラクティブ性ではなく、「リビングルームのTVとVTRを対象として、“ユーザーのライフスタイルにあったサービス”を展開していく」という加藤氏。その基盤となるのが、伝送路の周波数を有効活用できるデジタル放送への移行だ。さらに同氏は、“ある程度のユーザーが移行した段階”でアナログ放送を停止し、「空いた周波数帯域を活用し、J-COM独自のデータ放送などを提供していきたい」という見通しも示した。
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