DVDの場合、メディアをドライブに入れると、はじめにそのメディアがどういったメディアなのかという判別が行われる。その手順は、メディアが挿入されるとレーザーを点灯させ、フォーカスを合わせる。ここで、うまくフォーカスが合えば、次にメディアのコントロール情報を読み出し、メディアタイプの検出が行われ、このチェックをクリアして、めでたくファイルシステムを読みに行くというものだ。
DVD+R DLの場合、まず、第一の関門が、最初の行程の「フォーカスを合わせる」というものだ。DVD+R DLでは、レイヤ1の層における反射率でもスペック的には18%以上と、2層DVD-ROMと同じ程度は確保されているはずだ。
だが、現実にはここでひっかかってしまう可能性がある。というのも、DVD+R DLは、2層ディスクのため、このメディアが1層なのか2層なのかを判別しなければならない。間違って、レイヤ1にフォーカスし、そこでコントロール情報を読み出そうとしても読み出せないのだ。これは、ある意味、仕方ないことかもれない。記録型のディスクである以上、プレスされたDVD-ROMとは、光学特性が完全に一致しているわけではないからだ。このため、フォーカスがうまく合わず、読み出せない可能性は否定できない。
この判別を通過すると、次にリードインを読みに言ってブックタイプなどのコントロール情報を読みにいく。すると、ここでまた引っかかるケースが出てくる。
これは、単純にドライブが知らないブックタイプであるということではじいたり、あるいは先の識別で2層であると判別したにもかかわらず、ドライブが知っているブックタイプとの整合性が取れない(「そんなメディアはあるはずもない」と判断する)などの理由から識別できない可能性があるためだ。
DVD+R DLは、現状では、どの程度の機器で読み出せるのかは不明だ。確実にいえるのは、DVD+Rよりも再生互換性が低いことは間違いないことである。また、追記可能な状態で記録されたメディアは、レイヤ1の内周部に未記録エリアが多く存在するため、DAOで記録したメディアよりも、さらに再生互換性が低くなることは間違いない。
特にPC用の記録型DVDドライブやDVDレコーダーなどでは、メディアの情報をきちんと制御しているケースも少なくない。このため、「知らないメディア」と判断して、認識できない製品が続出する可能性は十分にあるだろう。
ただし、民生用のDVDレコーダーは別としても、PC用の記録型DVDドライブは、ファームウェアのアップグレードによって対応できる可能性が高い。製品発売当初は読み出せなくても、ファームウェアがアップデートされることによって読み出しがサポートされるケースも少なくないはずだ。
また、DVD+R DL対応のドライブは、ブックタイプを変更する(通常ROM化と言われている)ことが可能な製品も登場するようだ。当然、ブックタイプを変更することで、再生できるようになる機器も存在している。最終的にどの程度まで再生互換性があげられるかは、現状では未知数としか言いようがないだろう。
DVD+R DLは、2層のDVD-ROMとほぼ同等の容量を手に入れたことで、高画質のDVD-VIDEO映像を劣化することなく記録できることを期待するユーザーも多いはずだ。
今までは、4.7Gバイトという制限によって、あの手この手でこの容量の中に納めざるを得なかったのが、そうした苦労から開放されるように見えるからだ。
だが、実際にはそう簡単でもないようだ。
というのも、DVD-VIDEOを再生している最中に、レイヤーをチェンジするところで再生が止まったり、あるいはそのままフリーズしたりしてしまう現象がおきてしまうことがあるようなのだ。
これは、DVD-VIDEOの構成要素である「セル」がレイヤー0とレイヤー1との間で分断されてしまう(2層にまたがってセルが記録されてしまう)ためだ。
この現象を回避するためには、セルの途中で分断されないように書き込むデータのサイズを調整すればよい。現状ではこの機能を持ったオーサリングソフトやライティングソフトは少ない。だが、現在開発中のものもあるようなので、今後はこの機能を持ったソフトウェアがDVD+R DLを使っていくユーザーには必須となるかもしれない。
なお、DVD+R DL対応のディスクの発売時期だが、現状では未定のようだ。DVD+R DLディスクの製造は、難易度がかなり高く、想定したよりも量産化に手間取っているという話を伝え聞く。さまざまな話を総合すると、6月下旬ぐらいに発売できればよいのではないかというのが筆者の予想だ。しかも、出荷枚数は、かなり少数になるのではないだろうか。
また、気になる価格だが、現状では何ともいえない。常識的な価格を考えれば、高くても1000円ぐらいにしたいというのがメーカーの考え方だろう。だが、実際にそれで発売できるのかどうか――あまりに出荷枚数が少ないときは、「プレミア価格」で売る販売店がでてくるといった事態も考えられるかもしれない。
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