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» 2004年05月11日 11時19分 公開

老兵、今なお意気軒昂?――100億枚を突破した「CD-R」

CDs21ソリューションズの発表によれば、2003年度のCD-R世界総生産枚数が100億枚を突破した。価格も1枚50円を切るまでなり、すっかり定着した感のあるCD-Rだが、100億枚を突破した「次」はどうなるのだろうか。

[渡邊宏,ITmedia]

 CD-Rの2003年、年間総生産枚数が100億枚を突破した。

 これはCDs21ソリューションズが発表したもので、内訳はアジアが89%(約92億5000万枚)、ヨーロッパが9%(約9億4000万枚)、アメリカが2%(約2億1000万枚)。1989年に商品化されてから14年目で、初めて年間100億枚という枚数を達成した。なお、CDs21ソリューションズは、ビデオCDなどを推進していた「マルチメディアCDコンソシアム」とCD-R/RWを推進していた「オレンジフォーラム」が2001年4月に合併して発足した団体だ。

photo 1989年、スタート・ラボ(That'sブランドのCD-R製造販売元)が初めて発売したCD-R。中島平太郎氏のサイン入り

 一口に100億枚と言われてもピンとこないが、オーディオカセットは最盛期でも50億本。フロッピーディスクが30万枚、ビデオテープが20万本などと聞けば、“100億枚”がいかにすごいことかが分かる(数字はすべて、ふじわらロスチャイルドリミテッド調べ)。

photo 「1ビットあたりの単価もテープメディアと比肩できるところまで下がってきた」「CD-RWなどの派生型メディアも発生し、ユーザーフレンドリーさがユーザーの支持を得てきた」とはCDs21ソリューションズ会長の中島平太郎氏

 世界人口が62億人(2002年度・総務省統計局)なので、単純計算すると、既に全世界が人間が去年1年間で、1人1枚以上使った勘定だ。

 しかし、より大容量を収録可能なDVDメディアも既に普及しており、DVD-RやDVD-RAMなどは、動画を中心とした用途向けとして人気を博している。

 今後、CD-R、ひいてはデータ用CDメディアはどうなるのだろうか。その役目をDVDメディアに譲り、テープやフロッピーディスクと同じく消えゆくことになるのだろうか。

CD→DVDへの急速なシフトはない

 同団体で議長を務める井橋孝夫氏(スタート・ラボ)や事務局長を務める藤平亘氏(日本フィリップス)の話を総合すると、どうもCDが今すぐにDVDに取って代わられるということはないようだ。

 井橋氏は、「音楽用CDやPC用CD-ROMとも互換性を持ち、低価格で高速書き込みが可能なのはCD-Rならではのもの」とし、「世界規模では年率8%〜10%の成長が見込めるので、2004年度の総生産量見込みは110〜115億枚。国内は安定基調だが、105%前後の成長が見込める」と来年も市場は成長すると主張する。

photo 「書き換え型ではなく、追記型としてビジネスが成功したことは非常に大きい。100億といわず、200億、300億を目指したい」とはCDs21ソリューションズの議長を務める井橋孝夫氏。

 また、藤平氏も「DVDはフォーマットが3つ存在しており、まだCD-Rほど安定した規格とはいえない。国土交通省が建築データを提出する業者に指定しているのはCD-Rだ」と国土交通省の例を挙げながら、安定性が求められる分野ではCD-Rにメリットがあるという。

 「DVD-Videoが登場したとき、CDメディアがなくなってしまうのではないかという危機感が業界内にあった。だが、結果としてしては併存している。容量や価格の差もあり、CDとDVDでは使い道が違うので、単純な比較はできない」(藤平氏)

 井橋氏も「5年後には光ディスクのうち、25%はDVDになるだろうが、残りの75%はCDのままだろう」と急速なCD→DVDへのシフトはないと予想している。

需要増が見込める海外。日本では高付加価値型の商品

 メディアメーカーもこの予想に同調している。RiTEKの北村武彦氏は、「DVDが普及するに従って、CDメディアの需要は減るかと考えていたが、むしろ伸びている」としており、同社では月産1億6000万枚/月の生産能力を、2億〜2億2000千万/月に引き上げる計画を立てている。

 北村氏によると、市場の拡大が見込めるのは大きなマーケットは北米(および南米)と中国。日本国内では価格競争も激しいため、高付加価値型の商品を投入するのがメディアメーカーのトレンドになりそうだ。

 高付加価値型のCD-Rを提案するのはリコー。1枚のCDにCD-ROMとCD-Rを混在させた「Hybrid Disc」という商品を年頭から展開している。このディスクを用いることによって、「画像編集ソフトをROM部分に焼き込み、ユーザーはデジカメ画像をそのソフトで編集し、-R部分に焼き込んで配布すると」いった使い方の提案が可能になる。

photo リコーの「Hybrid Disc」。中心部がROMで周辺部が-Rになっている

 さすがに既存のCD-Rより高価になってしまうが、「200円は切る」(同社)とのことで、前述の以外にも、「ムービーをROM部分に焼き込み、-R部分にユーザーが自分のメッセージを焼き込んだ“絵はがき”」などさまざまな用途が考えられる。こうした用途が考案されるのも、CD-Rが成熟の域に入り、低価格化が進んだためと言える。

 CD-Rの規格が定められているのは「Orange Book」だが、藤平氏によると、48倍速の策定がなされた後、次のバージョンアップはないと通達されたそうで、規格面からもCDメディア自体が成熟期に入ったことは間違いない。ただCD-Rの成長を支えてきた低価格化は「もう限界」という声もあり、これまでの需要にプラスして、海外市場や高付加価値型のマーケットを視野に入れた取り組みが進められているわけだ。

 「老兵は死なず、ただ立ち去るのみ」とはマッカーサー元帥の引用で名高い古い軍歌の一節だ。しかし、記憶媒体の“老兵”は死ぬどころか、後進のDVD規格にあっさりと道を譲って立ち去っていくこともなく、記憶媒体としては異例の息の長いキャリアをこれからも目指していくようだ。

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