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コラム
» 2004年08月09日 11時26分 公開

子ども用PCの仕様を考えてみる (3/3)

[小寺信良,ITmedia]
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 Linuxの強みは、パッケージングの趣旨によってその性格が大きく変化することだ。教育用OSのプロジェクトが立ち上がり、操作性もある程度、ほかのOSへの共通性を感じさせるような作りであれば、良いものができる可能性はある。

 ただLinuxの弱点は、ソフトウェア開発が先へ先へ進み過ぎるあまり、ドキュメントの整備が後手に回るところだ。

 子どもの素朴な疑問に対して小まめに応えてくれ、しかも現状のソフトウェアのバージョンにピッタリ追従しているヘルプやッチュートリアルの実装は、かなり大がかりな作業となる。むろん使う子ども用だけでなく、コンシューマーベースではLinuxがさほど一般的とは言えない現状では、教える大人用のテキストも必要だ。

 パッケージの仕様に関しては、オープンな場で検討したほうが完成度は高まるだろうが、ドキュメント作成とサポートを考えると、やはりしっかりしたディストリビューション企業の存在が必要になってしまうだろう。

別の選択肢

 もう一歩思い切った考え方として、ノートパソコンライクな筐体の中に、PDA系OSを搭載した専用機を作るという考え方もある。

 多くのPDA用OSは、ファイルシステムにフォルダの概念があり、現状のパソコン用OSのあり方に近い。もともとモバイルを想定して作られているため、ハンドリングやバッテリーライフに不安はない。またアプリケーションも、コミュニケーション系ツールが充実しており、昨今のニーズに合う。

 このアイデアは、1997年アップルから発売された「Apple eMate 300」にその原型を見ることができる。

「Apple eMate 300」

 Apple eMateは、小型ノートPCスタイルの筐体にNewton OSを仕込んだ、教育市場向けコンピュータである。二枚貝を閉じたような曲線を多用したデザインは、後のiBookの下敷きと言われた。ワープロ、ペンデバイスによる作画機能に加え、当時のレベルとしては先進的だったWEBブラウザやメーラを標準装備していた。欧米の教育市場では評価を得られたが、Newton OSの開発中止とともに姿を消した。

 これを今の技術で作ると、昨年10月に発表されたPsion Teklogixの「NETBOOK PRO」あたりがイメージとして近いだろうか。OSにWindows CE.NET 4.2を搭載し、カラーディスプレイ+タッチスクリーンを備えている。

 だが、こういったPDAものは、PCの汎用パーツがほとんど使えないため、本体の作り込みにコストがかさむ。NETBOOK PROがビジネス市場向けにしか販売していないのは、推測だが採算上の問題があるからなのだろう。教育市場向けとして、どこかの市や県単位で一斉導入となれば話は大きいが、小売りで帳尻が合うかは微妙なところだ。

可能な限り、使わせたほうがいい

 現在小学校には、パソコンルームを設置しているところが多い。だがそれで安心されても困る。

 パソコンルームといっても、その実態は、図書室の一角に数台のデスクトップPCが置かれているだけ、常時指導に当たれる教員がおらず、子どもたちが自由に使えるわけでもないケースがほとんどであることは、親たちにはあまり知らされていない。パソコンが使える子と使えない子の差は、学校では永久に縮まらないのである。それでも小学生用パソコンの必要性は、荒唐無稽な話に聞こえるだろうか。

 現在のような状況が続けば、情報処理(および英語教育)の面で、アジア近隣諸国に追い越される日は近い。ここでナショナリズムを喚起するつもりはないが、子どもたちの明るい未来とかケツがむずがゆくなる話ではなく、パソコンやネットにはお遊びでもいいから、できるだけ、なじませておいた方がいいというのが、筆者の意見だ。

 そうやって早いうちから地道に国としての地力を上げていかないと、オレたちの国はあと10年やそこらで、かなりヤラレ放題になるという気がしてならない。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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