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第三回:コピー制御技術の最前線(1)特集:私的複製はどこへいく?(3/3 ページ)

» 2004年08月30日 16時58分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 電子透かしを用いることによって、「ハードウェア間のコピーコントロール(不正コピーの防止)」「不正コピーの追跡」といった機能の実現が見込まれる。もちろん、そうした機能の実装には記録メディアと再生/録音機器、双方での対応も必要になるが、不正コピーの防止については既にDVD-AudioやSACDにて実用化されている。

 例えばSACDに含まれている「インビジブルウォーターマーク」では、文字通り見えない電子透かしをメディアに埋め込み、複製の際はこれがコピーできないようにする役割を果たす。SACDプレーヤーは、このウォーターマークがないメディアの再生を拒否する。つまり、SACDの不正コピーはできない仕組みだ。

 映像への電子透かし埋め込みは、デコード/エンコードに必要とされる計算機パワーが大きいほか、(日立がライブ映像に対しても電子透かしを埋め込む技術を開発するなど開発は進んでいるが)、規格としての策定作業が難航しているために実用化が遅れている。

 電子透かしはアナログに出力された段階でも、コンテンツに埋め込まれた透かしが権利保護の仕組みを保つため、CPMRやVidiなどの技術と組み合わせることにとって、より強固な権利保護が可能になる。

 DVD-Videoやデジタル放送はコンテンツ自体が暗号化されているものの、TVなどの表示装置に出力される際にはアナログ信号となるために、その状態でも構わないというならば強引に複製を作ることが可能だ(Macrovisionなどのコピーガード信号が付加された放送・コンテンツも多いため、すべての複製が可能なわけではない)。

 電子透かしは、対応機器間でなければ効力がなくなるという問題はあるものの、「スピーカーから録音も取り締まる音楽コピー防止技術」のように、アナログ状態となったコンテンツの私的複製さえも制御する技術になりうる可能性を秘めているのだ。

 「映画館で上映されている映像を、カメラで撮影するような違法行為に対処できる方法としては、今のところ電子透かししかないのではないか」。電子透かし技術の開発に携わる東芝 研究開発センター コンピュータ・ネットワークラボラトリーの村谷博文氏はそう述べる。

 しかし、透かし自体に埋め込める情報量がまだ少なく技術面での改良が必要とされているほか、不正コピーの追跡機能を実現するにはプライバシーの保護をどうするのかなどの課題は残されている。「電子透かしによる保護は、あくまでも他の保護手段との併用になる」(東芝)というが、権利保護をより強固とするためには注目される手段だ。


 次回は、これから普及するであろう「デジタルホーム」のような利用形態で、私的複製の制限を実現する技術について、話を進めていきたい。

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