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結局、“デジタルホーム”ってなんだ?(2/3 ページ)

» 2004年09月27日 10時40分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 だがここが決まらないことには、おそらく著作権がらみの問題、P2Pやコピーワンスといった問題を解決する糸口が見出せないのもまた事実で、“永遠のすれ違い議論”を現実のテーブルに向かわせるための第一ステップと位置付けておきたい。

AV機器以外はどうする?

 このようにAV家電業界では、デジタル化、IT化とその先にあるべき世界というのは、だいたい方向性が見えてきた。これは、「どうあるべきか」という目標と、現時点での障害がある程度見えているから、進みやすいわけである。

 ではその一方で、シロモノのほうをどうするか。

 一般的に「eライフ」とか「デジタルホーム」と言った場合に、われわれがイメージするのはAV機器のような狭い範囲ではなく、シロモノを含めた家電全般である。

 例えばケータイからお風呂が沸かせますよとか、日が暮れるとカーテンが自動的に閉まりますよ、といったことは、技術的には今でも可能だ。だが問題は、誰もそれを理想的だとか、目標だと思っていないところにある。

 各メーカーとも一様に同じようなことを研究・発表しているが、一例としてJEITAが提案した「JEITAハウス」を見てみよう。

情報家電モデルハウス、通称「JEITAハウス」の外観。2002年春に一般公開されたときのもの
お米の残量が一定以下に減るとお米屋さんに自動的に発注する「自動発注米櫃(こめびつ)」。他にビール自動発注システムなどもある

 ここで示されているのは、各メーカーが現在の技術で実現可能な技術を集めたものである。だがここで実現されている機能をみても、それって本当に必要か?――ということをつい考えてしまう。

 おそらく潜在的に、それにかかるコストのことを考えてしまうからだろう。「ではまず、家を建てます」から話が始まるのでは、全然現実味がない。

 先日、といってももう1カ月近く経とうとしているが、大阪で行なわれた「e-ライフビジネス研究会」という会に出席してきた。大阪商工会議所、大阪大学大学院情報科学研究科IT連携フォーラムOACIS、JEITA関西支部の共同主催で、経済産業省からも講演者を招くなど、産学官連携のシンポジウムである。

 第1回目ということで、筆者にはどういう話になるのか、参加するまでつかめなかったのだが、参加された皆さんも同じ思いであったろう。

 技術的にはいろいろできるんだけど、そもそも「e-ライフ」のテーマをどこに置くのか、どういう着地点を目指せばいいのかという部分が曖昧(あいまい)になっているという事態が確認できた点こそが、今回の収穫であった。今後の展開が楽しみな研究会である。

デジタルホームをどう実現するか

 結局、家電製品とは何か、ということを突き詰めると、人間がやってきた面倒な家事を肩代わりしてくれるキカイである。現状はそれぞれが独立して動き、洗濯終わったよ、とか、電子レンジで解凍完了とかいったステータス情報を、アラーム音で知らせてくる。妻がいつも、「あー、今度はあっちで呼ばれた」といってバタバタしているのは、どこの家庭でも同じだろう。

 考え方として、今までの家電は、それぞれのステータスを人間に知らせるというところまでは来ている。それを突き進めてといく方向で考えていくと、その情報を元に人間が新たな指示を出すという、インタラクティブ性だろうか。

 最近は自走式の掃除機が現われて話題になっているが、あれなんかは前方にカメラを付けて、無線のコントローラで操縦できるようにしたら、自動でやり残した部分をソファに座りながら手動で操縦して掃除できたりして、なかなか面白そうだ。自律型家電の行く先は、最終的には人型やネコ型ロボットになるのかもしれない。

 ではシロモノ家電がAV製品のように横につながると、なんらかのメリットがあるのか。AV製品の場合は、コンテンツが媒介の役目を果たしている。コンテンツという情報を右から左に手渡していくために、連携が必要なのである。

 だがシロモノ家電は、各々があまりにも専門分野に特化しているため、仲介するコンテンツがない。例えば洗濯が終わったことを電子レンジに知らせても、多分、電子レンジさんは困ってしまうのである。

ネットワーク対応の洗濯機。ポイントはネットワークへの対応すること、ではなく、したことで「なにができるようになるのか」だろう

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