セコムは10月5日、重度身障者の自立を支援する初のロボット「セコムリフト」を開発、来年度初めにも販売を開始すると発表した。同社ロボットの第4弾で、ベッドから車いす、トイレへの移動をサポートしてくれる。ロボット技術を活用し、寝たきりの高齢者や障害者を優しく運ぶ力持ちだ。
セコムリフトは、8畳間から6畳間に置けるサイズの柱とレール、リフト部、吊りベルト4本と、要介護者が身につける「ウェアラブル・スリング」などで構成。ベッドの上をまたぐように設置し、吊りベルトで介護者を持ち上げて横の車いすやトイレに移動できるようにする。吊りベルトの脱着やリモコン操作などが必要なため、利用には片手がある程度動かせるなどの条件がある。
しかしここまでなら従来の介護用リフトとそう変わらない。セコムリフトの大きな特徴は、リフト部にセンシング機能を搭載してロボット化した点だ。
リフト部の吊りベルトは張力センサーで監視。持ち上げられた要介護者が移動中も楽なよう、姿勢を自動的に保ちながら運ぶようにし、腰などへの負担を減らしている。
車いすへの移乗時は、普通に車いすに下ろすと下半身が前にずれた姿勢になってしまう。これを防ぐため、セコムリフトは要介護者を下ろしてからいったん少し上に持ち上げ、下半身部分を引っ張ることで自動的に“座り直し”動作をしてくれる。
吊りベルトが1カ所でも外れていると異常と判断し、リフト動作をしないといった安全機構も備えた。
寝たきりの高齢者・障害者は全国で100万人を超えるとみられており、要介護者と介護者がともに高齢者という「老老介護」も増えている。日常生活に必要なちょっとした移動でも介護者の負担は重く、夜間などは要介護者が気兼ねしてトイレを我慢してしまうこともある。
セコムリフトは、こうした要介護者が1人で移動できるよう支援するとともに、介護者の負担を減らすねらいもある。「要介護者が好きな時に気兼ねなくベッドから車いすに移れる環境を提供したい」と同社の森下秀生・開発センター長は話す。モニターとして障害者約40人に実際に使ってもらい、「夜も安心して水分をとれるようになった」といった感想が寄せられたという。
介護保険対象者なら月々3000円で利用でき、非対象者には90万円台で販売する予定だ。初年度の販売見込みは数百台程度だが、要介護者の自立支援と介護者の負担軽減にロボット技術が役立つと見て、まずはじっくりと浸透させていく考えだ。
同社の福祉ロボットはこれが2製品目。同社は「人の行動の代わりが確実にできる」をロボット開発コンセプトに掲げ、2002年には日本初の食事支援ロボット「マイスプーン」を発売した(関連記事参照)。
マイスプーンは先月から欧州での販売も始まり、同社は「福祉先進国の欧州に日本の福祉製品が輸入されるのは珍しい」と胸を張っている。
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