10月20日に開始されたMSNの音楽配信サービス「MSNミュージック」。なぜポータルサイトのMSNが音楽配信サービスに参入するのか、同社が音楽配信サービスに対して描くビジョンを、同社 MSN事業部 サービス部 部長の浅川秀治氏に尋ねた。
――そもそも、なぜMSNが音楽配信サービスを開始することになったのでしょうか?
マイクロソフトとしてはWindows Media Playerといったプレーヤーソフトや各種のコーデックを開発・提供していますし、ここ最近ではiPodを始めとしたデジタルオーディオプレーヤーが急速な普及を見せています。
つまり、ソフトとハードが充実し、後はどういったコンテンツを楽しむかというところまで市場が成熟してきたのです。そこでMSNとしては、音楽というコンテンツの提供を考え、“MSNミュージック”という形でサービスを開始することにしたのです。
――配信曲数についてはサービス開始時に5万曲、年内に10万曲という具体的な数が出ています。会員数や売り上げの目標はどうでしょう?
「赤字を出さない」という考え方が前提としてありますが、正直なところ、まずは音楽配信サービスを“定着させること”が必要だと考えています。
そのためには収録曲数を増加させ、利用者を増やしていくことが求められます。定着には1〜2年はかかるかもしれませんが、定着すれば、レーベルやポータブルオーディオメーカーも積極的に動くでしょうから、そこまでいけば、すべてが良い方向に回転すると思います。
――曲数を増加させるといっても、楽曲を音楽配信サービスに提供するかどうかはレーベル側の判断になることが多く、MSNだけの努力ではどうしようもないという側面もあると思います。曲数以外にユーザーを引きつけるポイントは?
MSNミュージックからは、楽曲がオンラインで購入できなくても、ショッピングコーナーからCDを購入できるようになっています。それに、MSNメッセンジャーのタブ機能で最新情報を告知したり、Blog(MSNスペース)との連携といったサービスも開始する予定です。
私たちはレコード会社ではありませんから、曲数を自分たちで増やすことはできません。しかし、メッセンジャーやブログなどの手段で、“音楽にいかに出会うか”という機会や場所を提供することはできます。そのメリットはすぐに分かってもらえると思います。
――今年に入って、エキサイトやオリコンなども音楽配信サービスへの参入を開始、あるいは表明しており、サービス自体の競争が激化することが予想されます。差別化を図るため、人気アーティストを擁するレーベルの奪い合いということは起きないのでしょうか?
音源の囲い込みをするべきではないと思いますし、それはないと思います。サービスの提供元が違っても、音楽を提供するという目的は同じですから。最終的にはCDを買うのと同じ感覚で、音楽配信サービスが利用されるようになればと思います。
――iTunes Music Store(iTMS)をどう思いますか?
良いものだとは思います。ですが、これからはiTMS+iPodというだけではなく、さまざまなサービスとデバイスを組み合わせる多様性があっても良いのではと思います。
わたしたちにはメッセンジャーやBlogなど、アップルにはないサービスを持っています。それに、たくさんの種類のポータブルデバイスでサービスを利用することもできます。ソフトとハードの両面で、ユーザーへもっと多彩な“エクスペリエンス”を提供できると考えています。
――スタート時5万曲、年内10万曲という数字に関してはどうとらえていますか? 1軒のCDショップで選ぶことのできる曲数と比較すると、決して多い数字とはいえないと思いますが……。
社内でも、年内5万曲・年内10万曲という収録曲数でスタートすることについてはかなりの議論が繰り返されました。結局、少ないことは自覚したうえでサービスを開始するということになったのですが、スタートするからには、曲数以外の面も充実させて、利用したときにガッカリさせない仕組みを作っていこうということになったのです。
収録曲数の拡大は10万曲で止まるものでは決してありません。収録曲の充実を図りながら、MSNとして、“音楽との出会い”を演出していければと考えています。
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