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MicrosoftがIP電話に参入する?

» 2004年11月09日 08時30分 公開
[IDG Japan]
IDG

 MicrosoftはきっとIP電話市場に参入するだろう。だが、同社はなぜ中核事業と関係のない分野に参入しようとするのだろうか? それは、IP電話がMicrosoftのビジネスモデルに近づいているからだ。簡単に言うと、IP電話はソフトベース、サービスベースの産業となる。それはまさにMicrosoftがやっていることだ。通信セクターがIPに切り替えたときにCisco Systemsが勝つのなら、Microsoftは大規模市場がソフト・サービスに近づいたときに勝利する。

 まず、MicrosoftはOutlook、Live Meeting、NetMeetingやその他オフィスプロダクティビティ製品と密に連係するソフトフォンをリリースする可能性がある。同社は方針を転換して、Cisco、Avaya、Nortel Networksなどに提供していたOutlook APIを非公開にして、これら企業にMicrosoftの世界とはつながらない二流のソフトフォンを残すかもしれない。ソフトフォンがそんなに重要なのかと疑問に思う人もいるかもしれない。確かに重要なのだ。多くの大企業は向こう数年で固定のアナログ、デジタル、さらにはIP電話からスマートフォンやソフトフォンに乗り換えるだろう。British Petroleumは、2008年までに15万台の固定電話をほとんどソフトフォントスマートフォンに置き換える計画だ。

 Microsoftが提供する内蔵型のソフトフォンは、IP電話会社にとって大きな打撃となるだろう。これら企業の売上高は、主に固定IP電話によるものであり、ソフトライセンスによる売上も次第に増えている。MicrosoftはSession Initiation Protocol(SIP)クライアントをWindows XPにバンドルすることで、エンドポイントでこの技術を支持してきた。ほとんどのIP電話会社のSIP支持は口先だけだ。彼らはSIPを約束しているが、より機能豊富なサービスを提供するプロプライエタリな拡張機能を詰め込み、顧客を自社のIP電話アーキテクチャーに囲い込んでいる。もしもMicrosoftがSIPベースのソフトフォンを提供したら、それは大激変を起こし、IP電話業界の原則を新たに組織化せざるを得なくなるだろう。すべてのIP電話会社はビジネスモデルを変えなくてならないだろうし、それにうまく対応できない企業も必ず幾つか出てくるだろう。

 こうしたソフトフォンは、接続・通話サービスを提供するために接続マネージャかSIPプロキシが必要だ。MicrosoftがLive Communications Server(LCS)に接続マネージャ機能を追加するという予想はあながち無根拠でもない。あるいは、ホステッドIP電話サービスへのシフトが進んで、接続マネージャ機能がサービス会社に移行されれば、Microsoftが独自にこうした機能を構築するか、買収する必要性は薄れるかもしれない。そうなれば、同社はソフトフォンにのみ集中して、市場に出回るほかのすべての接続マネージャとの連係に力を入れるだろう。これで同社はソフトフォンを所有すると同時に、もっと重要な一連のIP通信アプリケーションを手にすることができる。

 Microsoftがある段階でIP電話市場に参入するのは避けられないことだ。来年は同社にとって参入に適した時期のはずだ――2005年はIP電話の導入が変曲点に達する年になると予測されている。いずれにしても、MicrosoftのIP電話参入はきっと市場を変えるだろう。

著者ニック・リッピス氏は企業IP通信の権威でGlobal 2000企業のCXOのコンサルタント。11月10〜11日にアトランタでEnterprise IP Communications Symposiumを主催する予定。

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