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D4パネル最高峰プロジェクター、エプソン「EMP-TW500」の実力レビュー:劇場がある暮らし――Theater Style(2/6 ページ)

» 2004年11月12日 20時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

素直な色調としっとりした質感

 実際に映し出される映像は、確かにD4パネル採用機の中でも際だって素晴らしいものだ。コントラストはスペック上1200:1となっているが、スペック値から想像するよりもずっと高いコントラスト感がある。

 シネマフィルタが用いられるsRGB、ナチュラル、シアター、シアターブラックのモードは、いずれも十分なコントラスト感があるが、シアターになると暗部階調がグッと沈み、シアターブラックでアイリスが全閉となるとさらに黒沈みが顕著になる。

 最新のDLPに比べるとやや黒浮きすると感じる場合もあるかもしれないが、白ピークとの差が大きいため、よほど暗い場面でなければ気にならないだろう。また黒浮きといってもたいていの映画館よりも良い(自宅近くに12スクリーンほどある比較的新しいシネコンがあるが、映写機が出す黒は実はかなり黒浮きしている)。

 シアターブラック時は350ルーメンとかなり暗くなるが、遮光さえ完全にしておけば白のピーク輝度も十分でパワー不足を感じる事は無い(ホワイトマットスクリーンに100インチ投影時)。調光器でやや部屋を明るくした中でも、シアターモード(おそらく500ルーメン程度)で十分。これはTW200Hの時にも感じたが、エプソン製プロジェクターの明るさやコントラストは、計測方法の違いなのかスペック値よりも良く見える。

 絵作りもナチュラルで誇張がない。地上波アナログやハイビジョンのビデオソースを映す場合には、ややおとなしいと感じるかもしれないが、映画ではシーンごと、作品ごとに異なる微妙な色調の違いを見事に描き切る。像全体の質感もVPL-HS50のような先鋭感はないが、しっとりと落ち着いたソフトな印象だ。かといって色が薄いわけではなく、鮮やかな色彩もきっちりと高い色純度で表現する。階調も豊富で、階調不足から平板的な表現になるところも見られない。

 本来の実力を発揮させるには、完全に遮光した環境で、機器類のLEDなども落とすなど、高画質化のための配慮を施しておく必要があるが、条件を揃えてシアターブラックに設定した時の絵は、画質調整ソフトでの再調整が不要と思えるほど完成度が高い。

 各明度階調において色がシフトする傾向も全く見られない。暗部は色カブリしやすいものだが、出荷時のキャリブレーションが念入りに行われているのだろう。暗部の色カブリが気になる向きは、是非実物をチェックしてみることを勧めたい。シャドウ部の階調も透過型液晶プロジェクターとしては優秀な部類で、もちろん液晶プロジェクターの得意な中明度以上の階調は文句なし。

 画調モードのダイナミックやリビングは、やや黄緑の強いクセのある絵だが、sRGB、ナチュラル、シアター、シアターブラックはいずれも高品質。sRGBはsRGB特性をシミュレート、ナチュラルはsRGBをベースにエプソン的に絵作りをしたモード、シアターはブラックの沈みを重視した暗部階調重視モードといった違いはあるが、どのモードを選んでも極端にバランスが崩れることはない。

 このあたりは安価な透過型液晶プロジェクターとの大きな違い。今年の20万円クラスも改善はされているが、TW500はさらにその上のクオリティがある。

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