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リアプロTVは日本に根付くのか?Theater Style〜麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/5 ページ)

» 2004年11月19日 10時01分 公開
[西坂真人,ITmedia]

麻倉氏 : そもそも、米国でのDVD志向は日本よりはるかに強いんです。日本では1996年にDVD第1号機が出て、米国では1997年春にDVDが登場したのですが、日本では緩やかに普及していったのに対して米国では出た瞬間に急激に伸びていった。もともと米国には映画をパッケージで楽しむという素地があったんです。映画館よりも自宅で気軽に楽しめる方がいいという考えから、リアプロTVでDVDを大画面で楽しむというスタイルが受けたのでしょう。

――最近はマイクロディスプレイ方式の伸びがいいようですが。

麻倉氏 : マイクロディスプレイが受けている理由は、やはりハイビジョン(米国ではHDTV)です。FCC(米国連邦通信委員会)がHDTVの普及促進策として、期限を定めて(2005年7月から36インチ以上の100%、2007年7月から13インチ以上の100%に)テレビへのATSCチューナー内蔵の強制導入を決めたため、メーカーもDVD効果だけでCRT方式のリアプロTVを売るのではなく、しっかりハイビジョンに対応したATSCチューナー搭載リアプロTVを作る必要性が出てきたのです。ちょうどその時登場したのがマイクロディスプレイ方式でした。

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 CRT方式はハイパワー時にブルーミング現象が発生してフォーカスがとれなくなり、映像がボケるという欠点がありました。NTSCレベルならまだ目立たなかったのですが、精細感が必要なATSCになるともはやCRT方式では対応できなくなってきたのです。その時にDLP/LCD/LCOSなどのデバイスメーカーが「高精細放送にはマイクロディスプレイが最適」とアピールし、急速にリアプロTVに採用されていったのです。デバイスメーカーの中でもTexas InstrumentsがDLPで積極的にリアプロTVを展開し、その流れに乗って“4000ドルリアプロTV”を発売したSamsung製品などがヒットするなどして、昨年後半からマイクロディスプレイ方式が伸びていきました。

――日本にも以前からリアプロTVはありましたよね。

麻倉氏 : 過去20年を振り返ってみて、日本では残念ながらリアプロTVがブレイクしたことはないですね。パイオニアが水平解像度400本以上のレーザーディスクを映し出すディスプレイとしてCRT方式のリアプロTV「SDシリーズ」を出しており、1988年ごろに私も1年ほど使っていました。パイオニア以外にも日立/松下/ソニーといったメーカーがCRT方式のリアプロTVを出していましたが、いずれも普及しませんでした。

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 マイクロディスプレイ方式では1995年にシャープが液晶パネルを使った画素型リアプロTV「ガイア」を出しましたが、生産上のトラブルもあってすぐに撤退しました。ビクターも1999年にホログラムでカラーフィルターを形成する単板D-ILAのリアプロTVを作っていましたが、最先端のホログラムの生産性の悪さなどもあり撤退していますね。

 大画面が低コストでできるリアプロTVは技術者の夢をかきたてるのか、これまでいろいろなメーカーがトライしているのですが、いずれもうまくいかないという状況が日本ではずっと続いていたのです。

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