立体映像というと、なんとなくチラついていたり、意識して目の焦点を合わせなければならかったりと結構面倒なもの。しかし、パシフィコ横浜で開催中の「立体映像産業展2004」(立体Expo)では、そんなイメージを覆す最新の裸眼立体視システムを見ることができる。
デジタルモーションが展示した「VR-Space Vision」(前方投影式)は、空中に実物が浮かんでいるかのように見える立体映像表示装置だ。正面からみると、思わず手を伸ばして触ってみたくなるほどのリアルさ。「空中浮遊型立体映像投影装置」のうたい文句はダテじゃない。
よほどのハイテクかと思い、説明員のお姉さんに仕組みを尋ねてみると、「電源を使っているのは回転台と照明だけ」とのお返事。
どういうこと?
「実は台座の部分に現物(ミニチュアの瓶)が入っていて、ライトをあてながらモーターで回転しています。それを凹面鏡で反射させ、前方に投影しています」。
めちゃめちゃアナログですね。
光学技術だけで空中浮遊を実現した「VR-Space Vision」。開発元はインターサイエンスで、デジタルモーションは販売を担当している。「店頭ディスプレイなどの用途が中心です。このほかにも上方投影式タイプや各種サイズがありますし、外観のカスタマイズも可能です」。
ちなみに、価格は展示機のサイズで約30万円とのこと。
CADデータを映し出しているのは、イノバテックブースで見つけた「DeptuCube Z1024」。液晶ディスプレイなのに、隣にあるCRTよりも奥行きがあるから不思議だ。さらに妙なことに、見る角度によってCADデータの画角が変わる。
つまり、正面から見ると平面図なのに、ちょっと横から見ると奥行きが出てくるのだ。まるで、ディスプレイの中に現物が入っているかのように。なぜ?
「ホントに奥行きがあるんです」とイノバテックの担当者さん。
どういうこと?
「この画面は、20枚のパネルを重ねたもので、物理的に10センチ弱の奥行きを持っています」。
すごい力わざだ。さらに担当者は、その詳細を教えてくれた。
ディスプレイ部分は、液晶スキャッタリング・シャッター20枚のスタックになっており、後ろから高速DLPプロジェクターを使って、スライスした3Dイメージを投射する。各パネルのシャッターは電子制御によってDLPと同期してスイッチを繰り返し、各パネル(レイヤー)は必要なイメージだけを映し出す仕組みだ。シャッタースピードは毎秒1200。つまり60フレームのスムーズな立体映像を表現可能だという。
また、パネルとパネルの間には、パネル同士の距離を補完するためのサブピクセルが配置され、合計640ピクセルぶんの奥行きを表現できる。さらに専用ハードウェアとアルゴリズムが「滑らかで連続性のある」立体映像へと調整。このあたりは「Depth Anti-aliasing」と呼ばれる特許技術らしい。
視野角は上下左右各40度あり、頭を動かせば奥にあるものが見えるため、主にCADや医療用(手術時のナビゲーション)として販売する予定だという。価格は800万円なり。
なお、「DeptuCube Z1024」をコンピュータと接続する際は、パラレルインタフェースを使用する。「VGAやDVIのポートでは、Z軸のデータが伝送できませんから。OpenGLで書かれたデータを丸ごと転送して、中で処理するんです」。なるほど。
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