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“冬ボ”で狙いたいホームプロジェクターバイヤーズガイド(3/6 ページ)

» 2004年12月17日 01時20分 公開
[本田雅一,ITmedia]

万能性のZ3、映画のためのAE700

 やや価格が高いVPL-HS50はここでは置いておき、売れ筋の20万円を切るクラスにフォーカスを当てると、TH-AE700とLP-Z3の完成度の高さが印象的だ。それよりもさらに実勢価格で安いものとなると、PJ-TX100Jが有力候補だ。

 しかし、売れ筋のTH-AE700とLP-Z3の2機種は相当に特徴が異なる。まずは設置性から見てみよう。

 LP-Z3はレンズシフト量・自由度が非常に高く、テーブルの上に出してポンと置けば、大抵の場所から適切な場所へと投影できる。ただし短焦点レンズの1.3倍ズームは、細長い部屋の一番後ろから投影する場合、画面が大きくなりすぎてしまう弱点もある。

 その逆にTH-AE700は待望のレンズシフトは付いたものの、シフト量はさほど大きくはなく、レンズシフトも細かな調整がとてもやりにくい。ポン置きで使うためのレンズシフトというよりは、常設設置の難度を下げるための機能である。しかし2倍という大きなズーム比のおかげで、遠くからでも近くからでも適切なサイズで投影できる。設置条件によっては、LP-Z3よりもTH-AE700の方がずっといい場合もあるのでケースバイケースだ。ちなみにEMP-TW200HとPJ-TX100Jはその中間で、ズーム比もそこそこ大きく、シフト量も同様。

 LP-Z3とTH-AE700が決定的に異なるのはプリセットの画調だ。本稿は各機種のプリセットで評価しているが、調整を行っても基本的な素性はさほど大きくは変わらない。

 LP-Z3はソースをさほど選ばず、“クリエイティブシネマ”に設定すれば大抵の場面で十分に満足できる絵を出してくれる。やや明るめの部屋を想定しているようなので、完全に暗く(遮光)できるならば、クリエイティブシネマに設定後にマニュアルでガンマを-2程度に調整。投影するサイズに応じて、絞りを50前後にまで絞り込むといい。ビデオソースでも、映画ソースでも、自然な雰囲気で映し出す。

 特に中明色から明るい部分の階調が滑らかで、彩度やコントラスト感を欲張らず、階調を重視した作りに見える。中明色に比べ、赤、青、黄色といった原色がややキツめに出る傾向が見られるため、ソースによってはド派手に見えることもあるのだが、原色以外はむしろ控えめな色ノリという2面性も感じる。とはいえ、プリセットだけで手軽に高画質が得られる万能性は評価したい。

 TH-AE700は、シネマ1の完成度がやはり高い。シネマ1は一般的なビデオソースの放送を見ると、色温度が低すぎ、全体に赤っぽく見え、青空のヌケも悪くなる。ところが、フィルム映画ソースを再生させると印象ががらりと変わり、大抵の映画(今回は「恋愛適齢期」、「パッション」、「スパイダーマン2」、「パイレーツオブカリビアン」を試聴)で良好な色再現とトーンカーブが得られる。コッテリとした色温度の低い場面も、太陽の下、青空が広がる明るい場面でも、全く違和感なく美しい色となる。映画中心のユーザーなら、そのプリセットの優秀性が気に入るはずだ。

 しかしシネマ1以外のプリセットが今ひとつで、ビデオソースを見る場合のベストな選択肢が見つからない。ナチュラルモードが最も自然だが、やや赤が強い。ナチュラルをベースに、マニュアルで微調整を加えたユーザープリセットを作ることを勧める。

 この2機種以外で惜しいと思えるのがTW200H。プリセットのナチュラルとシネマは様々な映像で違和感のない自然な絵となるが、最も暗いモードでもやや明るく黒浮きが若干目立つ。リビングルーム用として考えれば、その明るさが武器になるとも言えるが、ライバル2製品よりもややファンノイズが大きい点が気になった。

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