昨年夏、セイコーエプソンの次世代高温ポリシリコン液晶パネル「D5」の取材レポートをお届けした。
デバイスレベルで従来比1.5倍というD5を用いた試作機は、EMP-TW200と同じ光学系ながら、ちょっと驚くような黒沈みを実現していた。動的なアイリス制御と組み合わせるとさらに高いコントラスト感が得られる。漏れ光による色純度低下がない分、高彩度領域の表現力も高まる。さらにはその後、フルHD対応版のD5も昨年10月に発表された。
今年のD5供給計画は、720P対応の0.7インチパネルが今年3月、1080P対応の0.9インチパネルは5月からの出荷だ。720Pパネルでのコントラスト比向上は50%にも及び750:1を達成していたが、フルHDパネルに関しては20%アップに止まり、デバイスコントラストは600:1になる。
今月6日から開催されたInternationl CESでは、このフルHD対応D5を用いたリアプロTVの試作機が展示された。
現地で担当者に話を聞いたところ、コントラストの違いは開口率の違いから来るもののようだ。720PのD5では漏れ光が減少すると共に、開口率アップで透過光も増え、相乗効果でコントラストが高まっていた。フルHDのD5は開口率51%とD4並で、漏れ光対策によるコントラスト向上はあるものの、トータルでは20%のコントラスト向上に止まった。
もっとも、セットレベルでのコントラストは上々。試作のリアプロTVは、コントラスト感と階調性の両面で優れた素養を見せていた。残念ながら絵作りは未完成という印象だが、画素が細かくなったことで格子感も軽減され、スクリーン技術の向上もあってか滑らかな質感が出せそうな可能性を感じさせるものだ。
ところがD5を用いたフロントプロジェクタは、探してみても見あたらない。ITmedia LifeStyleではテレビの大型化の流れにおいて、近い将来、日本でもリアプロTVが売れ始めると読んでいるが、もう少し短い時間軸で考えると、当面、家庭向けプロジェクタの主流はリアプロではなくフロントプロジェクタになるだろう。
720P対応パネルが3月で、スグに採用する製品があるのなら、展示されていてもおかしくはない。しかし何社かのプロジェクタメーカーに話を聞いても(展示していないのはもちろん)かなり反応が悪かった。
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