P505の大きな特徴は動画。今までのEXILIMは動画機能にあまり力を入れてなかっただけに注目度は高い。
まずは一番重要な動画の形式である。
MPEG-4準拠とうたっているが、MPEG-4といっても世の中にはいろいろあるからだ。
P505で採用したのはMPEG-4準拠CODECを利用したAVIファイル。具体的には動画はMS-MPEG-4v2というマイクロソフトのMPEG-4で、ファイル形式はAVIである。実はこの形式の動画を採用したのはカシオがはじめて。今までもMPEG-4をうたうデジカメはいくつもあったが、実は詳細はバラバラなのだ。
サンヨーの「DMX-C4」はISO準拠のMPEG-4であるMP4形式(シンプルプロファイル)だが、ソニーの「DSC-M1」はMP4形式ながらシンプルプロファイルではない。ペンタックスの「Optio MX4」もMPEG-4だがファイル形式はQuickTime(MOV)、松下電器工業の「D-snap」はSD Videoと名付けられた形式でASFファイルである。もちろんみなMPEG-4準拠をうたっているという、ややこしいありさまだ。
各社事情があると思うが、カシオの場合はそれまでの動画の形式がMotion JPEGのAVIファイルだったので、AVIというファイル形式をそのまま受け継いだのではないかと思われる。
問題なのはMac OS Xでの再生環境が提供されないこと。MS-MPEG-4v2で圧縮されたAVIファイルはQuickTimePlayerで扱えないフォーマットで、さらにカシオからも再生ソフトが提供されないのだ(Windows環境ではWindowsMediaPlayerで再生可能)。
メーカーの保証外だが、QuickTimeにFFusion2.2というフリーのコンポーネントを組み込むとMac OS Xでも扱えるようになる。ただしわたしが試したところでは、うまく再生できるファイルとできないファイルがあった。QuickTimeで扱えるとiMovieなどでの編集が可能になるのでありがたいのだが、どのファイルもというわけにはいかないようだ。
なお、フリーの再生ソフトであるVLCのMac OS X版やMPlayer OS Xでは今のところすべての動画ファイルが再生できている。Macユーザーは参考にしてほしい。
では話を戻そう。
動画のスペックはMS-MPEG-4v2で、音声はステレオ。640×480ピクセルの30fpsのフル動画を録画可能だ。動画の画質モードにはHQ、NORMAL、LPがあり、HQとNORMALはどちらも640×480ピクセルの30fpsだがビットレートが違う。HQだと4.2MbpsでNORMALだと2.2Mbps。LPモードでは320×240ピクセルの15fpsとなる。
モードダイヤルには前述のとおり、動画用モードが4つ用意されている。
通常の動画モードのほかに、動画版ベストショット(ただし今のところ5種類しか用意されてない)、ショートムービー、パストムービーが用意されている。ショートムービーは8秒までの指定した時間の短い動画を撮る機能。ちょっとしたクリップを撮るのにいい。面白いのは、常にバッファに動画データをためており、シャッターを押す前の動画から撮れること。例えば、シャッター前5秒、シャッター後3秒にすれば、シャッターを押す5秒前から8秒分の動画を撮れるのだ。
パストムービーはそのバッファを使った動画機能。シャッターを押す5秒前の映像から記録してくれる。例えば、サッカーやフットサルを撮るとき、動画モードにして動きを追い、シュートしたのを確認してからシャッターを押しても、5秒さかのぼるので蹴る瞬間もちゃんと撮れているというわけだ。これはすごく便利。ずっと撮り続けてなくても、その前からカメラで追っておけば「ここだ」と思ってから撮影しても決定的瞬間を逃さないのだ。デジカメ動画ならではの素晴らしい工夫といえよう。
なお動画撮影時も光学ズームは使えるしAFも効くが、動画撮影中にAFが働くと一瞬ピンボケの絵になり、ちょっと見苦しいこともある。それを嫌う場合はMFでピントを固定するか、PFモード(パンフォーカスモード)で撮るのがいいだろう。この辺は改善を要求したい。
最後になったが画質の話。
色温度が低いときのWBに不安定さが見られるが、それ以外は500万画素コンパクトとしては一般的なレベル。露出も素直で、白いところが多いとアンダー気味になってくれるし、ISO感度を上げると素直にノイズがのっかってくる。
プログラムオートや絞り優先AE時はシャッタースピードの下限が1/8秒なので室内で撮るときはそれに注意した方がいい。
動画のクオリティはMPEG-4カメラの中ではなかなか良い方と言っていいだろう。
でも画質にこだわるデジカメではないと思う。
それ以上に
1)小型軽量超高速起動がもたらす機動力を楽しむ
2)EX-Finderや回転式液晶モニター、やたら細かい設定を駆使した撮影自体を楽しむ
3)気軽な動画撮影を楽しむ
という、楽しむデジカメなのだ。Mac OS Xでの再生が公式にサポートされてないのは非常に痛いし(QuickTime用コンポーネントでCODECが提供されるとうれしい)、画素数も500万画素はいらなかったかと思う。ワイド端でF3.3とちょっと暗めなので、その分感度が高いCCDが欲しいのだ。
でも久々に見た目や画質よりも「デジタルを楽しもう」っていうカシオらしいアイテムを見た気がする。そういう意味では高く評価してるし、現に持ち歩いてあれこれ撮って遊べるガジェット系デジカメとしてかなり面白い存在だ。
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