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PDPの世界需要は爆発する――松下は3期連続の増収増益

» 2005年04月28日 23時57分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 松下電器産業は4月28日、2004年度の連結決算を発表した。売上高は前年比16%増の8兆7136億円、営業利益は同58%増の3085億円となり、3期連続の増収増益。2月に上方修正した数字を上回った。プラズマTV(以下、PDP)「VIERA」やデジタルカメラ「LUMIX」の好調にくわえ、2001年から進めてきた経営の合理化が一定の効果を上げたという。

photo 松下電器産業の中村邦夫社長

 同社の中村邦夫社長は、「厳しい経営環境の中、2001年の大赤字を契機として大規模な構造改革を継続的に実行してきた。経営体質を見直し、スリムにして収益の出る構造にすることはできたが、まだ十分ではない」として、今後はドメイン単位で改革路線を継続していく方針を強調する。

 商品部門別の売上高をみると、まずAVCネットワークは2%減の3兆5588億円。アテネオリンピック需要に乗ったPDPやデジタルカメラなどのデジタルAV機器が前年比5%増と好調に推移した反面、電話や海外向け携帯電話といった情報通信機器やビデオ、オーディオ機器が前年を下回った。

 一方、白物家電などを含むアプライアンス分野は売上高1兆2179億円(前年比2%増)と安定した収益で推移。デバイス分野は、モーターや電池などの不振により、前年比3%減の1兆1125億円となっている。「デバイス分野(の不調)はパソコンと携帯電話の需要が頭打ちになったため。原因はデジタル家電ではない」(中村氏)。

尼崎工場の稼働を前倒し

 同時に発表した2005年度の見通しでは、売上高8兆7200億円と「実質104%程度」を見込んでいる。中でも牽引役として挙げたのは、やはり好調なPDPとデジタルカメラだ。

 このうちPDPに関しては、グローバル展開を見越して生産能力の早期拡大を図る。まず、2005年11月の稼働を予定していた尼崎工場を「遅くとも10月までに稼働させる」として、スケジュールのさらなる前倒しを表明。茨木第2工場のライン増強と合わせ、今年度中に年間生産能力を210万台程度にまで引き上げる方針を明らかにした。

 これにより、2004年度は108万台だった同社のPDP生産能力は一気に倍近い数字になるが、中村氏は「これでも不足気味かもしれない」と言う。

 「薄型テレビ、DVDレコーダーなどのデジタル家電は、世界同時に需要が爆発している。PDPの世界需要は2008年で1000万台規模と予測していたが、これを1100万台くらいに修正しなければならないようだ。しかも、画面サイズも大きくなっている。需要拡大にあわせ、PDPでは世界シェア30%を狙う」(中村社長)

 デジタルカメラに関しては、手ブレ補正技術などブラックボックスの技術(独自技術)を重視。半導体から製品までを提供する垂直統合型のメリットを活かし、2006年度までに「世界シェア10%、800万台以上に挑戦する」とした。

敵対的買収を防ぐ“大規模買付ルール”

 今回の決算説明会では、ほかにも注目の発表があった。松下は、連結キャッシュフローをベースに1.2億株を上限とする自己株式取得や増配(年間配当20円)などの株主還元策を発表するとともに、「ESVプラン」(ESV:)と呼ばれる“大規模買付ルール”を打ち出している。

 ESVプランは、日本放送とライブドアの一件で話題になった“敵対的買収”を抑止するためのもの。現状、松下には1兆6000億円程度の「すぐにキャッシュに換えることのできる資産」があり、また時価総額も3兆1000億円程度と、海外の投資ファンドや企業が敵対的買収を仕掛けても不思議ではないレベル。このため1年ほど前から検討を進めてきたという。

 具体的には、20%を超える議決権付株式の買付が行われる場合、買付者側にその目的や買付対価の算定根拠、買付資金などの説明を求め、取締役会の意見をまとめて開示する。「松下らしい、透明性の高い手段だ。大規模な買い付け行為を受けるかどうかは、株主が決める」。

 またESVプランでは、必要に応じて買付者と交渉したり、ルールを遵守しない買付者に対しては対抗措置を講じることも明言している。

 「既に50億円の新株予約権証券発行登録を行った。敵対的買収に対する対抗措置にはさまざまな方法が考えられるが、一つの選択肢として、必要に応じて機動的に新株予約権を発行できるようにした」(中村氏)

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