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デザイン家電ができるまで――三洋「CAPUJO」の場合特集:魅惑のデザイン家電(2/3 ページ)

» 2005年07月08日 06時23分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 デザインコンセプトは“繭”。テレビに向き合う人が包み込まれるようなカーブとボリュームを持ち、前から見ても、後ろから見ても「つるるん」としている。一方、サイドから見たときにも“薄さ感”を損なわない程度の厚みに抑えた。本体色は、光が当たったとき、その陰影がボリューム感を演出するよう、反射率の高い「パールホワイト」と「メタリックシルバー」をチョイス。ちなみに、カプージョのシリーズには17型から42型まであるが、筐体のサイズによって凹凸の深さも変え、陰影の具合を調整しているそうだ。

photo 42型PDP。筐体のサイズによって凹凸の深さも変え、陰影の具合を調整している
photo リモコンもほぼイメージ通り

 2004年8月の製品発表では、ニコラ氏が「これまでの薄型テレビは、機能とインテリアをマッチさせることしか考えられていませんでしたが、テクノロジーと人の関係は変化してきています。人との関係を強く持ち、人を包み込むデザインを目指しました」と話している。この場合の“人との関係”は、ユーザーがテレビに対して愛着を持てるということだと清水氏は語る。「インテリアに溶け込むだけではなく、より近い存在になってほしい。いつもそばにいる、ペットのようなものでしょうか?」。

photo グエナエル・ニコラ氏(昨年8月の製品発表会で撮影)

“ダメ出し”がいっぱい

 こうしてデザインの基本方針が固まり、名称も“繭”の意味を持つスペイン語「CAPULLO」をもじった「CAPUJO」(カプージョ)に決まった。

 しかし、デザイン画やモックアップを見れば分かるように、テレビとして考えると足りない部分が多い。たとえばスピーカー、スイッチ類、赤外線リモコンの受光部など、機能的に必須となるパーツが見あたらないのだ。

 このうち、スピーカーは液晶画面の下に配置するアンダースピーカー型にすることは当初から決まっており、ニコラ氏のデザインでも“Vシェイプ”と呼ばれる画面下のスペースが設けられていた。ただ、デザイン画にスピーカーから音を出すためのスリットがない。ニコラ氏にその旨を伝えて新しいデザインを描いてもらったが、それでも音声出力が不足することがわかった。結局、社内デザイナーと開発担当者が相談して設計し、それをニコラ氏に見てもらいながら意見を反映させるという手順に落ち着いた。

 そもそも、デザイナーのニコラ氏にしてみれば、当初のイメージを崩してほしくないだろう。このため、筐体に余分なものが付くことは極力避けるように最初から指示されていたという。「だから、最初はリモコン用の赤外線受光部やスピーカーが入っていなかった。それどころか、LEDや放熱用の穴、側面のAV入力端子、さらにはネジ穴すら、見える場所にあってはいけないと言われていました」(同社AVカンパニー、テレビ統括ユニット商品企画グループの川本準マネージャー)。

photo AVカンパニー商品企画グループの川本準マネージャー

 しかし、ニコラ氏の要望にすべて応えていたら、商品として成り立たなくなってしまう。逆に営業サイドからは、ハンドルやデジカメ端子(USB)などを“見て分かる形”で取り入れて欲しいという要求があった。店頭に置いたとき、機能面をアピールできるからだ。

 「われわれや販売店のような売る立場から見れば、店頭で訴求できる機能も表に出したいわけです。逆に目立たせたいくらいですから、どこかでバランスを取らなければならない」(AVカンパニーテレビ統括ユニット事業企画グループの川崎大治担当課長)。

photo マーケティングを担当する川崎大治担当課長

 「その都度、ミーティングが必要になりました」と清水氏も振り返る。「モックアップとデザイン画から、実際の設計図面を書き、それをニコラさんに渡して意見を聞くという手順の繰り返しです」。

 シンプルさを失わせたくないデザイナーと、同じ思いを抱きながらも別の要素を入れ込まなければならない立場のメーカー担当者。ミーティングの数は自然と増えていく。

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