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コラム
» 2005年09月05日 08時30分 公開

小寺信良:誰も「本物のハイビジョン」を知らない (2/4)

[小寺信良,ITmedia]

 さてHDTVの魅力といえば映画スクリーンのような16:9という画角も魅力の1つとなっているわけだが、1080iのピクセル数である1920×1080も、綺麗に16:9の比率になっている。

 先日、パナソニックがフルHD解像度のプラズマテレビを発表して話題になったが、多くの人はこの「フルHD」という言葉にピンと来なかったのではないだろうか。元々規格上は1920×1080ピクセルなんだから、それどおりのテレビが出たから何だ、というのは当然の疑問だ。

 まずそれには、現在のハイビジョン対応と言われているテレビの解像度が、実は1920×1080ピクセルないということを知る必要がある。今回のパナソニックのように敢えて「フルHD」とうたわない限り、ほとんどのテレビでは1366×768のパネルを使っているのである。

 この数値は、縦横比としては16:9に限りなく近いが、きちんと割り切れる数字ではない。また本物の1920×1080に比べると、縦横で約0.71倍になっている。つまり非フルHDパネルで見る映像は、本来の映像を0.71倍縮小したもの、ということになる。

 次に、縮小した画像を見ると何が問題か、というところになる。例えばデジカメなどの写真データを縮小するときのことを想像してもらえればおわかりかと思うが、縮小処理を行なう際には、かならず補完処理が入る。きっちり1/4とかの数値であればまた話は違うが、0.71倍というエラく中途半端な補完を行なうわけだから、当然輪郭部や階調処理などは、ディザリングのお世話になることになる。

 多くの人に経験があるように、画像というのは縮小すると、精細感が増すように見える。画素が詰まることで、そう感じるわけだ。なんだ、精細に見えるならいいじゃないか、と思われるかもしれない。

 もちろん精細に見たい部分はそれでいいのかもしれないが、ボケた部分はどうだろう。例えば映画などのフィルム撮影では、被写界深度を浅く取って背景をぼかし、立体感のある絵作りを行なうのが普通だ。だが縮小してしまうと、このボケた部分まで画素が詰まり、なんとなくしゃっきりしてしまうのである。

 極端に言えば、せっかく苦労して背景をぼかして撮ったのに、全体的になんとなーくフォーカスが来ているような絵になってしまうわけである。従って勝手に縮小しない1920×1080のフルHDのテレビのほうが、制作者の意図どおりの映像を見ることができる、というわけである。

プロ機はフルHDか

 じゃあみんなでフルHDのテレビを買おう、で済むほど、話は簡単ではない。実は映像を作る側のシステムにも、同じような「ニセHD問題」が存在する。

 現在HDデジタルの信号を伝送する規格として、放送ではHD SDIというインタフェースが使用されている。VTRからスイッチャーにつないだり、カメラからVTRにつなぐといった接続は、みんなこのHD SDIだ。1080iのシステムでは、ここに1920×1080解像度の信号が流れることになる。当たり前だ。

 ところが映像の記録装置であるVTRが、この解像度で録画していないのである。現在1080iのHD映像記録VTRとしてはソニーのHDCAMが番組納品基準になっているが、この方式は輝度を横1440ピクセル(色差情報は横480ピクセル)に縮小して、テープ上に記録している。一方パナソニックのDVCPRO HDはそもそも720pがベースなので、輝度は横1280で記録している。

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