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コントラスト向上で進化した“ハリウッド画質”――松下「TH-AE900」レビュー:Theater Style(1/5 ページ)

» 2005年12月23日 03時57分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 ハリウッドでフィルムのデジタル化を行う際の画質調整を行う技術者“カラリスト”とともに絵作りを行った“ハリウッド画質”も、今年の新製品「TH-AE900」で第3世代となった。かつてこの画質調整を行ったカラリストのデビッド・バーンスタイン氏は「多少の黒浮きがあっても色を追い込めば意図した絵を出せる」と話したが、そうは言っても黒の表現力が上がれば、昨今、暗いシーンが増加しているハリウッド映画の表現力が高まることは間違いないだろう。

photo 松下電器産業のシアタープロジェクター「TH-AE900」

 果たして最新のエプソンD5パネルを採用した本機は、どこまで表現力を向上させているだろうか。

黒浮き感の抑制で黒側の階調表現が豊かに

 本機の基本的なハードウェア構成は、昨年のTH-AE700とほぼ同じである。2倍ズーム、上下左右に0.5画面ずつのレンズシフト機能、観音扉型に開閉する動的なアイリス(絞り)制御、135ワットの超高圧水銀ランプ、各種入力端子などは従来機種をそのまま引き継いでいる。

photo 付属のリモコン

 映像処理回路に関しても、昨年は階調性やスケーリング性能を向上させる改善が施されたが、今年はTH-AE700の仕様をそのまま引き継いだ。額面上、変化しているのは液晶パネルと画素格子を緩和するスムーススクリーンの改善のみである。

 しかし実際に使ってみると、昨年不評だったレンズシフトの操作性に手が加わっているのが確認できた。ジョイスティック型のレバーを傾けることで調整するレンズシフトは、中間位置への細かな調整がやりにくいと不評だったが、今年はダンパを入れることで調整しやすくなっている。だが、上下63%、左右25%のシフト範囲は、ライバルの透過型液晶パネル採用製品に比べると狭く、また操作性も改善されたとはいえ、ダイヤル式に比べると目的の位置へのシフトがやりにくい。これは来年以降への課題といえる。

 さてTH-AEシリーズは、設置性に関しては常にライバルの後塵を拝しては来たが、それでも高い競争力を保ってこられたのは、絶妙のプリセットと絵作りによる映画的描写の確かさがあったからだ。

 TH-AE900ではコントラストが広がったことで黒浮きや従来よりも抑制され、その分、黒側の階調をきちんと見せる本シリーズの絵作りがより生きている。映画にとって暗部階調の表現はことさらに重要だ。通常のテレビドラマやバラエティ番組、スポーツ放送では高い平均輝度のシーンが連続するが、映画ではライティングによる影を生かした立体的な絵の作り方が多くなる。

 このため暗い輝度レンジの領域をきちんと描き分けてやらなければ、そこにある情報が浮かび上がってこない。従来のTH-AEシリーズは、黒浮き感をことさらに抑え付けようとせずに、きちんと暗部階調を見せようとしていたが、もちろん限界はある。TH-AE900は、パネルコントラストの向上により、従来から重視していた階調の見せ方を、さらに豊かにする方向でチューンされているようだ。

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