ITmedia全体もそういう傾向があるのだが、これまで本コラムでも録画・録音補償金問題からコピーワンス規制に関する動きまで、消費者と制度の関係を積極的に取り上げてきた。そしてまた、新たなる問題が持ち上がろうとしている。
この4月から、いわゆるヴィンテージものの電気製品が販売禁止になる、という衝撃的な事実に、ネット上では大きなとまどいと怒りが渦巻いている。すでに製造中止となったゲーム機、あるいはメーカーが倒産してしまった楽器類、古くから中古市場とは切り離せない高級オーディオ機器などの販売が制限されるのは、「電気用品安全法」という法律が本格施行されるためだ。
だが筆者は今回の騒ぎに、どうもこれまでとは違う何かおかしなものを感じている。いや、この法律に対しての疑問と言うよりも、出発点である法律と、結果として起こっているネットでの騒ぎの間に、なにかのロジックが抜けているような気がしてならないのである。
今回はこの、「本来間に来るはずのロジック」を埋めてみることにした。電気用品安全法を敵と見なすかそうでないかは、それを知ってからでも遅くはないだろう。
この4月に本格施行される電気用品安全法は、これまでの「電気用品取締法」を1999年に改正し、2001年から施行されているものだ。わざわざ「本格施行」と書いたのは、これまでの5年間は猶予期間だったのである。
電気用品安全法によれば、今後はこの法律に適合し、安全が確認されている証として、PSEマークを付けて製造・販売するよう求めている。また4月からは、このマークが付いていない製品の販売が禁止される。したがってここでは便宜的に、電気用品安全法を「PSE法」と呼ぶことにしよう。大まかな経緯に関しては、経産省のQ&Aのページがわかりやすい。
この法律が対象となる製品は295品目とかなりの数に上るが、それらはちゃんとリストになっている。大きく分けて「特定電気用品」と「特定電気用品以外の電気用品」に分かれている。
PSE法のそもそもの目的とは、「非常にシンプルで、電気用品について消費者の安全を確保するためなんです」と経済産業省 商務情報政策局 消費経済部 製品安全課 課長補佐の福島 伸一郎氏は言う。
PSE法は経産省管轄の法律なのであるが、消費者の安全を図るという意味では、同省には4つの法律がある。「消費生活用製品安全法」、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」、「ガス事業法」、そして今回のPSE法こと「電気用品安全法」だ。
この4つの法律それぞれに対して、特定品とそれ以外という区分けがあり、今回のPSE法によって、経産省が抱える法律内の製品についてすべてマークを付けて管轄しやすくする、というミッションが完了したことになる。
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「これまで『特定電気用品以外の電気用品』のほうには、安全検査済みを表わすマークがなかったんです。以前はあったんですが、一時期なくした時期がありまして。今回の法改正では、規制緩和の流れの中で政府の関与を極力減らすということで、自己責任に基づく製品流通という方向に変わったわけですが、マークもないのでは自主規制にも齟齬があるということで。今回の法改正で、この表示と法律が合うことは、我々にも消費者にもメリットがあると考えています」(福島氏)
つまりマークと法律を1対1で対応させることで、製品に問題が起こったときに、我々も省庁もすぐ動ける体制にしておこう、というわけである。
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