「HD DVDは、確かにDVDの進化した姿かもしれない。しかしわれわれは新しいメディアを求めている。現在、これほどまでに拡大したDVD市場に、新しい価値をもたらす光ディスクをスタンダードとするならば、それは革命的でなければならない。われわれがBDを支持する理由は、それが革命的だからだ」
こう話すのは、ウォルト・ディズニー・スタジオズ(The Walt Disney Studios)で主に技術評価を担当しているベン・カー副社長だ。先日、日本でもホームビデオ製品の販売会社であるブエナ ビスタ ホーム エンターテイメントが、新タイトル発表の場でBlu-ray Discの事業計画を力強く述べたが、ディズニーの次世代光ディスク事業への取り組みは本気だ。
昨年の取材で上席副社長のクリス・キャリー氏(現在は退職し、ディスク複製会社のテクニカラーに在籍)が、BDの容量が必須であると訴えたように、ハリウッドメジャーの中でもディズニーは、次世代光ディスクにもっとも多くの容量、機能、性能を求めている映画会社だ。
では、ここまで強くBDを支持しているディズニーとブエナビスタは、BDタイトルをどのような計画で発売しようとしているだろうか。
この連載を読んできた方であれば、おそらくは予想できるだろう。ブエナビスタもまた、ディズニー作品を毎月、継続的に発売していく計画だという。しかもブエナビスタの国際マーケティング担当上席副社長、リュード・クレマース氏は、「新作については“すべて”DVDと同時発売。これにカタログタイトルをくわえていく」と積極的だ。別途、毎月10本程度は用意するという情報もある。
「2006 International CES」では初期タイトル10本のみしか発表していなかったディズニーだが、「現時点ではタイトル変更の可能性もあり、すべてのタイトルを明らかにはできない。しかし、最初の12カ月に発売するタイトルは、すでにリストアップを終了している。それは非常にアグレッシブなもので、1年後にはその充実ぶりに驚くことだろう。われわれはBDのビッグサポーターであり、このフォーマットの立ち上げに協力していく」とクレマース氏。
では、なぜBDなのか。ディズニースタジオではなく、ビデオパッケージの販売事業を行う立場としての考えをクレマース氏に訊いてみた。
「容量の大きさこそすべてに勝るメリットだ。コンシューマーにベストの体験を与えるには、将来にわたってタイトルに利用する容量が増えていく可能性を見据えていなければならない。くわえてBDは、より多くの映画スタジオ、より多くの家電メーカー、より多くのPCメーカーがサポートしており、その周辺技術やサービス、製品を提供するメーカーからも非常に幅広いサポートを得ている」
「とくに将来、技術的に成長するポテンシャルがあることが重要だ。BDには、世代を重ねることで容量が増加していく将来性があり、将来“革命”的なソフトを生み出せる可能性がある。一方、HD DVDはDVDの進化形。HD DVDがエボリューションなら、BDはレボリューション。この違いこそが、ウォルトディズニーカンパニーがBDを選んだ理由だ」
しかし、動画圧縮技術は日々進歩し、BDにもHD DVDにも高圧縮率のアドバンストコーデックが搭載されている。エンコーダ側の改良も見込めば、果たしてそこまでの容量が必要なのかという意見があるのも事実だ。
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