先週、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の家庭用ゲーム機「プレイステーション 3」(PS3)が11月上旬に日米欧同時で販売開始されることが明らかにされた。当初の予定は2006年春であり、約半年の遅れが正式にアナウンスされたことになる。
発表会の詳細は+D Gamesの記事を見ていただきたいが、PS3は次世代ディスクであるBlu-ray Disc(BD)のドライブを搭載し、高精細な映像を再生するBDビデオソフトのプレーヤーとしての役割も期待されている。
期待のほどは、SCEの同社代表取締役社長兼CEO 久夛良木健氏が「PS3は充実した機能を持つBlu-ray Discプレーヤーだ」と強調したことからも明らかだ。
発売延期の理由について久夛良木氏の説明を交えながら確認し、AV機器としてのPS3がもたらすインパクトと、次世代DVD競争へ及ぼす影響について考えてみた。
PS3は当初今年春の発売を予定していたが、それは11月上旬に延期された。生産体制を整えるという理由ももちろんあるだろうが、久夛良木氏は主な発売延期の理由を2つあげている。ひとつはBDに用いられる著作権管理技術「AACS」の策定の遅延、もうひとつはデジタルインタフェース「HDMI」の次バージョンの実装を目指したことだ。
2005年12月末の段階でBDビデオコンテンツの規格「BD-ROM」については規格化が完了し、2006年1月中旬には各社でのテストもほぼ完了していたのに対し、その時点でもAACSはまだテストが完了していなかった。これは2005年1月に掲載した本田雅一氏によるソニー シニアバイスプレジデント 西谷清氏へのインタビューでも明らかだ。
「実は2005年8月末にはBDに関する規格策定が終了すると信じていた」。規格策定の遅れが計算外の事態であったことは久夛良木氏のコメントからも読み取れる。また、久夛良木氏は同時に「これからはセキュリティ、著作権管理をどう扱っていくかがポイントになる。将来を見据えた、よりよい規格が必要だ」とも述べており、PS3を息の長いBD製品とするため、AACSの策定完了を待たなければならなかったと胸中を明かしている。
そのAACSも無事に策定が完了したが、ライセンスが開始されたのは2月21日。いくらSCEが強力な生産設備を持っていたとしても、1〜2カ月の内に実装とテストを完了し、「2006年春」に販売を開始するにはかなり厳しいスケジュールになる。滑り込みで間に合わせることはできたかもしれないが、そうすると十分な生産量を確保できない可能性が高まる。注目される家庭用ゲーム機でもあり、大々的な立ち上げを狙う同社としては避けたいシナリオだろう。
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