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PS3発売延期で明らかになった次世代DVD両陣営の“脚質”コラム(3/3 ページ)

» 2006年03月22日 10時58分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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“BDソリューション”の旗印となるPS3、ライバルとの競争はどうなるか

 久夛良木氏はPS3の出荷ペースを「1カ月で100万台、2007年3月には600万台」と述べている。これは全世界規模の話であり、日本国内でどれだけの数量が流通することになるかは不明だが、相当な台数となることは間違いない。

 これはゲーム機の出荷台数を示すだけではなく、BDプレーヤー、それも次世代HDMIを備えたフルファンクションの本格的なBDプレーヤーが短期間の内に大量投入されることも意味する(久夛良木氏はPS3のBD再生機能について「フルスペック」と明言している)。

 DVDが普及した際の経過をふり返ってみると分かるが、新たな家庭用光ディスクフォーマットの定着には低価格な対応機がまず必要とされる。2000年3月4日にデビューしたプレイステーション2の当初の価格は3万9800円で、当時存在していたDVDプレーヤーよりも数段低価格であった。

 「新世代ゲーム機で、しかも、VHSよりきれいなDVDという映像ソフトも見られるらしい」と、AV機器としての価値をあまり考慮せずにPS2を購入したという人も少なくないだろう。PS2は発売3日間で90万台以上を販売し、結果としてDVDという新フォーマットを牽引した。

 DVDの時は事情が違うと指摘する声が聞こえてきそうだが、PS3に求められている立場はPS2のものとそう変わらない。BD対応機器として速やかかつ大量に市場へ浸透し、BDをDVDと同じようなポジションに押し上げることだ。PS3は“BDソリューションの旗印”となることを誕生する前から運命づけられているともいえる。「PS3はBDの牽引役であり、BDを生活に定着させる役目もある」(久夛良木氏)。

 しかし、ライバルであるHD DVDの存在も忘れるわけにはいかない。HD DVDは既存DVDの拡張規格とも言えるだけに製品化はBDに比べて容易といわれており、東芝が3月中にHD DVDプレーヤー「HD-XA1」「HD-A1」を北米地域で販売開始することを明らかにしている。また、2006年中には米Microsoftも家庭用ゲーム機「Xbox360」に外付けタイプのHD DVDドライブを提供し、HD DVD対応機の数を増大させる計画だ。

photo 東芝のHD DVDプレーヤー「HD-XA1」。価格は799.99ドル

 3月も下旬に差し掛かる今でも「HD-XA1」と「HD-A1」の販売開始の報が聞こえてこないのはやや不安だが、BD陣営のシンボルであるPS3が11月上旬の登場になることが決定した以上、「先行してできるだけ認知度を高めユーザーを獲得したいHD DVD、PS3で11月に攻勢をかけるBD」という両陣営の動きが鮮明になったわけだ。

 統一規格が立ち消えになった今、ハリウッドメジャーを始めとしたコンテンツベンダーは両規格のサポートに傾きつつある(関連特集:次世代DVDへの挑戦)。しかし、BDだけ、あるいはHD DVDだけで投入されるタイトルも表れるはずで、このままでは見たい映画ごとに違う種類のメディアを買うというハメにもなりかねない。

 「先行馬:HD DVD」「差し馬:BD」と両者の脚質が明らかになった次世代DVD競争、先に「デファクトスタンダード」というゴールに到着するのはどちらなのだろう。

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