DVテープにHD映像の記録が可能なHDV規格は、キヤノン、シャープ、ソニー、日本ビクターの4社により策定されたものだ。これまで家庭用ビデオカメラとしては、日本ビクターがHDV 720p方式の「GR-HD1」を、ソニーはHDV 1080i方式の「HDR-HC1」「HDR-HC3」などをリリースしてきた。
普及価格帯の製品の中では、当時最高ともいえる高画質性能を提供してくれた「DCR-HC1」の新規開発や、その後継機種「DCR-HC3」での小型軽量化。そうしたHDVカメラ市場に対するソニーの奮闘には、頭を下げるほかない。しかし一方で、ほかに選択肢がない点に不満を感じていたのも事実だ。
そして、ようやくキヤノン初のHDVカメラ「HV10」が発表された。同社では今回の参入に際して、従来の“IXY DV”ではなく、新たに“iVIS(アイビス)”というブランドも立ち上げている。iVISとは“EYE+VISION”であり、「見たままに撮り、感じたままに記録」することを意味しているという。これは単なる名目にとどまらず、実際に「HV10」は多くの面で、満足度の高い製品に仕上がっている。
テレビを見ていてもCMが頻繁に流れており、キヤノンの意気込みが伝わってくる(「IXY DV」のときも、シャラポワの登場するCMを頻繁に見たような記憶はあるが)。このCMでひたすら強調しているのが、「1920(CMOS ハイビジョン)」というキーワードだ。つまり、この製品では撮像素子に新開発の「キヤノン HD CMOS」を採用しており、1920×1080画素での読み出しが可能だ。
ただ、CMOSセンサー自体が“フルHDでの読み出しが可能”とはいえ、当然ながら、テープへのHDV 1080i記録時には1440×1080へと落とし込むことになる。しかし、実際に撮影したビデオを再生してみると、1440×1080を十分に生かしきったような解像度の高さと、色階調の豊かさが相まって、見事な映像を実現している。特に木々の緑の細かさや海面の濃淡などにおける“深み”は上々だ。
キヤノンのDV/DVDカメラといえば、従来から、RGB原色フィルターによる鮮やかな色合いと、“写真と呼べるレベル”の静止画品質が特徴なのだが、「HV10」ではそれをそのままHDへと昇華させたともいえる映像を見せてくれる。
この「HV10」のカメラ本体は、DVカメラのスタンダードモデル「IXY DV M5」とほぼ同じスタイルを継承している。横から見ると、高さ104×奥行き106ミリというほぼ正方形に近いシルエットで、幅は約56ミリと片手で掴むのに無理のないサイズに収まっている。また質量は、バッテリーやテープ込みの撮影時でも500グラム程度だ(本体のみで440グラム)。
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