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ダイソン「Root6」は、片付けられない女と男の「そうじ力」も加速できるか?!プロフェッサー JOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと!」(2/2 ページ)

» 2006年12月28日 17時22分 公開
[竹村譲,ITmedia]
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 「ルートサイクロンテクノロジー」では、勢いよく吸い込んだ塵や埃を含んだ空気を、「Clear Bin」「Shroud」「Root Cyclone」と呼ばれる、チリやホコリにとっては最悪の3つの関門で捕獲する。今回、筆者の購入したダイソンのハンディ電気掃除機の「ルート6」もその原理は基本的に同様だ。

 「Clear Bin」 は、透明のビン状の関門だ。この中を流れる空気の渦から引力の原理で落下した比較的大きなチリはビンの底に堆積して行く。テクノロジーの説明だけではなく、電気掃除機が「働いている感」を証明するにも、この透明のビンが示す「わざわざゴミを見せる」という常軌を逸した効果は、エンドユーザに大きなインパクトを与えたといえるだろう。もうひとつの関門は、「Shroud」(スラウド)と呼ばれるメッシュシリンダー。複雑な空間を通り過ぎる時に、髪の毛や、綿ぼこり程度の小さなチリが振るい落とされる。

photophoto 比較的大きなチリが遠心力で空気と分離されたのちに堆積するクリアビン(左)、底は本体のボタンをプッシュするだけで開くのでチリに触れずに廃却できる(右)

 そして、残る関門は、より小さなチリやホコリを振るい落とすために、円錐を数個束ねたような複数の遠心分離器だ。円錐の頂点に向かって高速に流れる空気は、加速度を増し、その空気の流れをコントロールすることで、より小さなホコリが最下段のClear Binに空気と分離されながら落ちてゆく。そして、理論的にはほとんどチリやホコリを含まない綺麗な空気が室内に還元されてゆく。「ルートサイクロンテクノロジー」はこの様な理想的な「お掃除環境」を提供してくれる画期的な先進技術なのだ。

photophoto 円錐形のルートサイクロンの頂点部分にあたるオレンジ色のカバー(左)、ルートサイクロンの中身。ここでは微粒子のような細かなチリが遠心分離され落下する(右)

 確かに「Root6」の排気口から吹き出してくる排気をにおってみても、従来の掃除機で感じられるモーターの油のような、何か独特の臭いのある特殊な空気ではないように感じる。吹き出す排気は部屋の空気より綺麗だ、という「Dyson掃除機=空気清浄機」のような説明も見受けられるが、筆者は排気口から吹き出してくる空気成分を分析した訳でもないので、そんなことを言うつもりは毛頭無い。基本的には、従来の掃除機でも「チリやホコリ空気を濾過し、空気だけを排気する」なワケであり、排気は綺麗なはずである。

photophoto ほとんどの塵を振るい落とした空気が通過する排気通路を覆うフィルター(左)、きれいになった空気が最後に通過するフィルター。3〜6カ月に1回は洗浄が必要(右)

 発売当初は見向きもされなかった「サイクロン掃除機」だったが、今や、国内でも、シャープ、東芝、ナショナル、日立、サンヨーとほとんどの家電メーカーが従来の紙パック方式の掃除機と並んで、サイクロン方式の電気掃除機を販売開始している。名前こそ、「パワーサイクロン」とか「マラソンサイクロン」「タイフーンロボ」とあまりセンスの良くないバリエーションだが、そのほとんどは従来のバキューム掃除機とは異なる、サイクロン型掃除機市場への参入宣言なのだ。

 すでに登場して20年。歴史あるダイソンのオリジナルサイクロン掃除機の特許の網を何とか避けながら、そして、後発の強みをいかして、日本メーカーが、対抗できうる新しいサイクロン式掃除機を開発、販売することも実現可能だろう。いや既に実現しているのかもしれない。大英帝国生まれのサイクロン掃除機を、多くの優秀な家電メーカーが凌駕するのも既に時間の問題かもしれない。

 残念なことだが、技術的に優秀な製品が市場を必ず制するとは限らない。ダイソンの本当の凄さは、信念のある「優秀な技術」、「製品哲学」、そして「デザイン力」を、一般の消費者に十分理解、納得させることの出来る企業の持つ「コミュニケーション力」に負うところが大きいのだ。

 ダイソンの「そうじ力」の納得感は、複雑なことを誰にでも簡単に理解させる「わかりやすさ」であり、それを実現しようとするマーケット努力なのだ。そして、自信の現れは、掃除機のお尻に記載された世界22カ国にあるほぼ365日サポートの「Dysonお客様相談室」の電話番号なのだ。

photo シールで貼り付けられた世界22カ国の「Dysonお客様相談室」の電話番号

商品:Dyson root6 ハンディクリーナー

購入:秋葉原ヨドバシカメラ(12月4日)

購入価格:3万2800円

竹村譲氏は、日本アイ・ビー・エム在籍中は、DOS/V生みの親として知られるほか、超大型汎用コンピュータからThinkPadに至る商品企画や販売戦略を担当。今は亡き「秋葉原・カレーの東洋」のホットスポット化など数々の珍企画でも話題を呼んだ。自らモバイルワーキングを実践する“ロードウォーリア”であり、「ゼロ・ハリ」のペンネームで、数多くの著作がある。2004年、日本IBMを早期退職し、国立大学の芸術系学部の教授となる。2005年3月、より幅広い活動を目指し、教授職を辞任。現在、国立 富山大学芸術文化学部 非常勤講師。専門は「ブランド・マネジメント」や「デザイン・コミュニケーション」。また同時に、IT企業の広報、マーケティング顧問などを務める。

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