有機ELを採用した家庭用テレビ「XEL-1」が、ソニーから発表された。パネルの最薄部は約3mmと、現在のいわゆる薄型テレビが極厚に感じられるほどだ。今回は、有機ELの特徴を踏まえつつ、この意欲的な製品が持つ意味を考えてみたい。
ソニーが10月1日、世界初の有機ELテレビ「XEL-1」を12月に発売すると正式発表した。有機ELテレビの発売は半年前に予告されていたが(ソニー、有機ELテレビを年内発売へ)、実際に市場へ投入されるインパクトは大きい。
XEL-1最大の特徴はその薄さ。画面サイズは11V型と小型だが、最薄部は約3ミリと、ブラウン管はもちろん従来の薄型テレビに比べても圧倒的に薄い。重量はチューナー部をあわせて約2キロ、パネル部のみならば額縁程度の重さと推測される。薄型テレビといえど、30インチを超えるあたりから壁掛け使用には壁の補強が不可欠だが、有機ELならばその必要はなさそうだ。
表示能力の高さも売りのひとつ。有機ELの応答速度は数マイクロ秒程度と、十数ミリ秒は必要な液晶に比べて圧倒的に高速。スポーツなど動きの速い映像も、残像感なく滑らかに表示できる。自発光型のデバイスであるため明るく、コントラスト比は100万対1と一般的な液晶を大きく上回る。ただ薄いだけでなく、キレとメリハリのある映像を期待できるのだ。
有機ELパネルは、ガラス基板に蒸着させたある種の有機物質に電流を流すことで発光する。有機物質そのものが画素として発光するため、液晶パネルのような光源(バックライト)は必要としない。プラズマパネルも自発光型だが、消費電力は有機ELパネルのほうが格段に低い。ちなみに、XEL-1の消費電力は45ワット、同社製20インチ液晶テレビと比較したときのインチあたりの消費電力は約40%減とのことだ。
しかし有機ELにも弱点はある。1つは耐久時間の短さ。一般的に液晶パネル(バックライト部)の耐久時間は6万時間とされるが、XEL-1はその半分の3万時間だ。1日8時間の使用で10年間もつ計算だが、20年はもつ液晶に比べると心許なさは拭えない。
大型化技術が確立されていないことも弱みといえる。液晶やプラズマは、すでに50インチ超の製品が店頭に並んでいるが、XEL-1は11インチと比較にならない。現在開催中のCEATEC 2007では、27インチモデルがソニーのブースに参考出品されていたが、30インチ超えは当分先になりそうだ。
振り返れば、ソニーは有機ELの採用に積極的だった。現在でこそ、デジタルカメラやビデオカメラのモニタとして多くの採用事例を持つが、3年前の2004年9月に発売されたPDA「CLIE PEG-VZ90」は、量産品に有機ELを採用しており、同社は有機ELのパイオニアともいえる存在だ。XEL-1の発売に踏み切ったことは、前述した弱点の克服は今後の課題として、"有機ELのソニー"というブランドイメージの確立に貢献するに違いない。
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