DVDにH.264で記録する――ほぼ同じコンセプトを持ちながら、Blu-ray陣営とHD DVD陣営とで異なる録画規格が制定された。今回は、前回取り上げたAVCREC(→「AVCREC」――AVCHDとはどう違う?)の対抗馬ともいえる「HD Rec」について解説してみよう。
HD Recは、DVDフォーラムが定めるDVDメディア(DVD-R/RW/RAM)を記憶媒体とする、映像コーデックにH.264を採用した映像記録方式だ。今年9月に制定されたばかりの新規格であり、DVD-VideoやDVD-VRとの直接の互換性はない。
DVDという安価なメディアに高圧縮率/高画質のH.264ムービーを書き込むというコンセプトは、前回紹介した「AVCREC」と同じ。しかし両者に互換性はなく、HD Recで記録したDVDメディアはAVCREC対応機では再生できない。逆もまた然りだ。
ちなみにこのHD Rec、現在のところ対応機種を入手できる状況にない。HD DVD陣営の盟主とされる東芝が対応機種の投入を発表しているに過ぎず(→CEATEC JAPAN 2007:東芝ブースで「RD-X7」を見た」)、しかも発売開始の時期も10月25日時点では未定。CEATECにてお披露目は済んでいるが、市場に出回るのはもう少し先の話だ。
HD Rec最大の特徴は、DVDフォーラムが承認した規格であるということ。その意味ではHD DVD陣営の規格といえるが、Blu-ray陣営のソニーや松下もフォーラム加盟企業であり、HD Rec対応機種を出してもおかしくはないといえる。それに、DVDフォーラムお墨付きの規格ということは、ある程度将来性が担保されていると考えられる。
DVDとの共存が可能なこともポイントが高い。HD Recは既存のDVDの延長線上にある規格であり、1枚のDVDメディアにHD映像(TSまたはDRモード)とDVD-VR、そしてHD RecのH.264という異なる映像フォーマットを混在させることができるのだ。
片面4.7GバイトというDVDの容量は、ハイビジョン番組が一般化した現在では明らかに不足している。しかし次世代たるBlu-ray/HD DVDの両陣営とも、互換性のない似通った規格を出したということは、容量が不足気味ながらも「なんとかなる」現状があるからにほかならない。
その理由のひとつに、すべてのデジタル放送がフルHD化されていないことが挙げられる。例えば、地上デジタル放送で放映されている標準画質(SD)モードの番組には、ビットレートが4Mbps程度のものが少なくない。仮に全編が4Mbpsだとすると、TS/DRモードのまま収録しても片面1層のDVDに2時間、8Mbpsとしても1時間の録画が可能ということになる。十分実用の範囲だ。
もちろん、Blu-ray陣営のAVCREC同様、HD DVDメディアの価格がこなれるまでのつなぎであることは確かだろうが、DVD-Rが安くなった今もCD-Rがあるように、長く利用される可能性もある。普及するかどうかは、今後のメーカーの対応次第だろう。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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