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デジタル分野総ナメ――「2007年デジタルトップ10」麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/5 ページ)

» 2007年12月12日 08時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

――8位には生活家電がランクインしましたね。お掃除ロボット「ルンバ 570」です。

麻倉氏: 前々から掃除ロボットは使ってみたいと考えていたのですが、ウチではダメだと思っていました。なにしろモノが多すぎるので(笑)。ですが、これは違いました。自分のカラダが入るスペースがあれば見事に掃除してくれます。

photo 麻倉氏のリスニングルームを掃除する「ルンバ 570」

 とにかくしつこく掃除してくれるのです。100回ぐらいは同じ場所を掃除しているのではないでしょうか。本体の吸い込み口だけではなく外側にもブラシがついているので、カドもちゃんと掃除してくれるのが嬉しいです。

 自走式なので、電源ボタンを押すだけのフルオートです。センサーがゴミを検知しなくなったら、あるいは充電が切れたら充電ベースに戻ってきます。これがとても可愛いいのですね(笑)。きちんと見ていると20分ほどうろついて(掃除して)、ゴミを掃除したと思えば充電ベースに帰ってくる。

 思うにこれは生活革命と呼べるのではないでしょうか。これからいろいろなロボットが家庭に入ってくると思いますが、まず入り込む領域は掃除ではないでしょうか。会話やセキュリティといった分野もありますが、まだ技術が追いついていませんよね。

 家事の煩わしさから人を解放して、人をよりクリエイティブなことに集中させるのが家庭用ロボットの王道でしょう。家事の能力が低ければ使い物になりませんが、彼は非常に頑固でなんども繰り返して掃除してくれます。この頑固さはロボットならではです。人はすぐに飽きてしまいますからね。機能的に優れているというだけではなく、動きの可愛らしさも興味深いです。

――7位にはもう1枚BDソフトが入りました。劇場でもヒットを記録した「パイレーツ・オブ・カリビアン」です。

麻倉氏: いろいろな意味で記念碑的な作品で、一番優れた画質のハイビジョン映像を見せてくれるソフトです。

 画像の良さにはいろいろな要素があるのですが、フォーマットの開発者が圧縮をしたというのがスゴいところです。この作品はMPEG-4 HighProfileを利用していますが、MPEG-4 AVCは元来小さな画面用のコーデックなので精細感はありますが、鮮明感は足りません。そこを補うべくHighProfileが作り出され、利用されているのです。それを作ったMPEG技術者が実際に圧縮したというのですから、これは記念碑的なソフトウエアです。

 ハイビジョンのD5テープから圧縮した際のひずみを最低限に押さえ、ディテールに神が宿るかのような美しさを得るに至っています。映像へよりこだわり、技術を投入していけば、より原画に近い情報性を手にできることを示しています。

photo 「パイレーツ・オブ・カリビアン」で蓄積されたMPEGエンコーダーのノウハウが製品へ反映された「DMR-BW900」

 この映像美はパナソニックのAV製品にも影響を与えています。今冬発売のBDレコーダー「DMR-BW900」の開発にもコーデックを開発した方が携わっています。業務用のエンコーダーで作り出した画面と、家庭用のエンコーダーで作り出した画面はどうしても違ってしまいますが、では何故その違いが出るのか? それは圧縮された色信号の復調回路に問題があるという結論になり、それを改良したのです。その効果は目覚ましく、昨年のDMR-BW200とは比較にならないほどの表現力です。

 また、フルHDプロジェクターの「TH-AE2000」では、「パイレーツ〜」のディレクターズ・インテンションは画面の奥行き感にあるとして、空間表現をしっかりとできるようにフォーカスのあてかたの工夫を凝らされています。作品として優れているだけではなく、AV機器にも影響を与えたハイパワーなソフトとしてランクインさせたいですね。

――6位にはタッチパネルで操作する気持ちよさを改めて認識させ、iPodというイメージを飛び越えた感すらもある、新感覚のポータブルプレーヤー「iPod touch」です。

麻倉氏: アップル製品の興味深い部分のひとつに、インタフェースの開発を挙げることができるでしょう。Lisaの時代にも早々とGUIを実装しましたし、iPodもクリックホイールという素晴らしいインタフェースを伴って登場しました。やりたいことが直感的・本能的に操作できるように考えられているのです。

 クリックホイールも秀逸なインタフェースですが、iPod touchはさらに押し進めており、画面に言葉や映像があったらそれを触ると動き出します。これはとても人間にとって本質的なプロシージャ(procedure:手順、手続き)なのですね。

 テープやCDのプレーヤーはメディアを出し入れしながら使うので「触って操作する」という感覚が支配的でしたが、最近はHDDやフラッシュメモリなど中に入りっぱなしなものが多いので、そうしたインタフェースをそのまま使っても感覚とのズレが生じてしまうのです。iPod touchは中にメディアは入っていますが、タッチパネルの操作性がそれをまったく感じさせないですね。

 いうなれば、iPod touchが備えるのは「コンテンツにそのままタッチする」という感覚ですね。CoverFlowでも端まで操作した際にピタリと止まるのではなく、行きすぎてから止まるような冗長性を持たせることで、「楽しくインタフェースしようぜ」と話しかけてくるかのような操作感を作り出しています。斬新かつ気持ちのよいインタフェースが素晴らしいですね。

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