ITmedia NEWS >

デジタル分野総ナメ――「2007年デジタルトップ10」麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/5 ページ)

» 2007年12月12日 08時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

――次はまたもコンテンツがランクインしましたね。5位はアンジェラ・アキの2006年12月の武道館ライブを収録したBDビデオ「MY KEYS 2006 in 武道館」と、そのライブと実現するまでを描いたNHKのドキュメンタリー番組「武道館に桜が咲いた日」です。

麻倉氏: 彼女自身の才能もそうですが、この作品については情念すらも感じますね。初めての武道館ライブにかける彼女の熱い気持ちが伝わってきます。

 まずはNHK BShiのエアチェック「武道館に桜が咲いた日」ですが、何と言っても画質が素晴らしいです。10位で触れた松田聖子さんのライブ映像は高解像度・ハイカラーと、典型的なパキパキのハイビジョンといえるものですが、アンジェラ・アキさんの場合はデジタル・シネマ製作に使われるソニーのフルハイビジョンシステムで、21台のカメラで撮影されています。とても映画的で、光と影のコントラストを対比ではなく、ハーモニーとして表現しています。カメラワークやスイッチングも滑らかで優しいのです。

 エアチェックバーチャルで感動したのは歌詞が表示されていることです。教科書体ともいえるようなしっとりとした書体が映像・音楽と一体化しており、総合芸術とも感じます。いろいろなイベントでこのエアチェックしたBDを再生する機会も多いのですが、古い映像から派手なシーンと見てゆき最後にこの映像を流すと癒されて、すてきな気分になれます。感極まって泣いてしまう人もいるほどで、映像と音の力の凄さを改めて感じさせますね。

 BDビデオ版はさらに良くなっています。放送では音声がAAC 2chだったのがBD版ではリニアPCMになっているほか、その映像からはさらに深みというか、スゴみまで感じられます。BDの持つ能力を具体化した素晴らしい作品です。

――4位はソニーのフルHDプロジェクター「VPL-VW200」です。今年はプロジェクターも一気にフルHD化が進みましたね。なぜそのなかでもこの製品を選ばれたのですか?

麻倉氏: 今年になってフルHDプロジェクターは本当にどれも良くなりました。エプソンの「EMP-TW2000」はアクティブアイリスなしでもコントラスト比 5000:1で黒のツヤを上手に表現していますし、ビクターの「DLA-HD1」は前モデルでも高かったコントラスト比を30000:1というまで引き上げました。そんななかでVPL-VW200を選んだのはキセノンランプを採用していることを私が高く評価しているからです。

photo VPL-VW200

 価格や環境的なことを重視してしまうとキセノンランプには逆風が吹いているといえますが、色の再現性を考えるとUHPランプでは絶対に真似できない力を持ちます。UHPランプは赤が弱いので全体の波形をなんらかの手段で補正しなくてはなりませんが、キセノンランプはRGB的にフラットです。肌色のヒューマニテイとグラデーションは圧倒的にキセノンランプの独壇場です。

 VPL-VW200は前モデルのVPL-VW100に比べて階調感がさらに良くなっています。特に中間から白へ向かうあたりの感じが改良されおり、より細やかな映像をみることができます。ここはキセノンランプのパワーをうまく使っている部分ですね。

 最近ではソフトの画質が非常に良くなっていますし、画調(ディレクターズ・インテンション)も多様化しているので、それを受け止めるだけの輝度や色、再現性が必要となりますが、それを本製品はたっぷりと備えています。

 本製品は従来の画素型では得られない色調・階調を得られます。フォーカスなどはとにかく画素式は階調表現やコントラストがイマイチと考えていた3管式のユーザーも乗り換えてを考えても良いでしょう。マニアのひとつの目標になるプロジェクターです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.