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デジタル分野総ナメ――「2007年デジタルトップ10」麻倉怜士のデジタル閻魔帳(4/5 ページ)

» 2007年12月12日 08時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

――いよいよベスト3です。3位にランクインしたのは、パナソニックの“ブルーレイ DIGA”のトップモデル「DMR-BW900」です。

麻倉氏: ハイビジョンテレビの普及や、BDレコーダーの種類が増えてきたこともあり、そろそろ買いたいというAVファンの「マグマ」がたまっている時期に登場しましたね。

photo DMR-BW900(上段)と前モデルのDMR-BW200(下段)。

 前モデル(DMR-BW200)も良かったのですが、DMR-BW900は画質・音質が圧倒的に向上しました。BDビデオの再現性を向上させる復調回路の改良は素晴らしい効果で、同じディスクにこれほどの深遠な映像情報があったのかと驚嘆するほどです。

 それに、音質の向上も要チェックです。前モデルでは帯域拡張のリ・マスターをONにしたほうが音質は良好でしたが、今回はAACの“素”の音が飛躍的に良くなりました。自室のJBL Everest K2で鳴らしても高い次元でバランスがとれるほどです。もちろんHDオーディオの音も良いですよ。まだ努力が必要かとは感じますが、HDMI経由の音もなかなかです。ただ残念なのが、アナログ5.1ch出力が無くなってしまったことです。

 同社は「フルHD」へこだわりを持っており、MPEG-4を用いたAVCRECの実装もその一環と言えます。BSハイビジョンを録画すると通常はビットレートが24Mbpsほどになるのですが、12Mbps程度まで落としてもドラマなどの録画には十分です。ハイビジョン映像はDVDにも保存できますが、それはプアなソリューション。価格も安くなってきたBDに保存すべきでしょう。

 AVCRECの意義とは、これまでフルHDは基本的にすべてストリームで保存するしかありませんでしたが、AVCRECによってフルHDのまま、自分にとっての重要度に応じてクオリティやメディアを変更できるようなったことです。VHSの時代ならばテープグレードを変えるようなコンテンツの重要度による使い分けが可能になったのです。あと、地味な部分ですが、リモコンがより感覚的な操作が行えるようにボタン配列が最適化され、使いやすくなったのも評価したいですね。

――2位はパイオニアのプラズマテレビ「KURO」です。その画質は各方面で高く評価されていますね。

麻倉氏: プラズマと液晶を商品の売れ行きで比較すればプラズマは押されていると言わざるを得ませんが、画質的に語れば液晶はまだ「表現」のレベルに達していません。「表示」のレベルをうろうろしている段階です。

photo 60V型フルHDの“KURO”「PDP-6010HD」

 KUROからはプラズマの強みが十分に感じられます。自発光デバイスなのでダイナミックレンジが広く、それがディレクターズ・インテンションの再現の原動力になっています。黒の沈み方も驚異的で、その黒色はドレッシーな、沈みのある黒色となっています。

 画面を見ていて感じるのは色の自然さです。コントラスト比などの数値のすごさとは反比例するかのように、映像はナチュラルです。暗い画面における色づけの確実さも従来製品より良くなっていますし、暗部の階調性も高いのです。

 従来のディスプレイでは見えないものも見えてくるほどですが、テレビとしてもパワフルです。EPGなどの情報を元に映像をイコライジングする機能を持っているので、ユーザーが特別意識せずとも、最適な絵を見せてくれます。

 映像のすごさに隠れがちですが、音も秀逸です。最近の薄型テレビは形状の制約からスピーカーも開口部も小さくなりメガフォンのような貧弱な音になってしまうのですが、KUROはエンクロージャーを備え、きちんとした自然な音が出ます。その自然さは映像に共通するもので、今存在する薄型テレビの中では最高に良いものだと思います。

 パイオニアは昔から映像にこだわっていますが、それはすべてパッケージの映像をきれいに見たいというところから始まっています。パッケージのリソースを引き出すという精神が最高のコントラスト比、映像美を引き出しているのです。ワン・アンド・オンリーな存在として薄型テレビ群に君臨する製品と言えます。

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