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“超薄型”競争に先制パンチ――“Wooo”UTシリーズ(2/2 ページ)

» 2007年12月20日 18時21分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 レイアウトフリーに欠かせない要素として同社が取り組んだものに、モニター部とチューナー部を分離した「セパレートスタイル」とワイヤレス化がある。このうち、セパレートスタイルはある意味において挑戦だろう。プラズマのような薄型大画面テレビは、当初は分離型でスタートしたものの、使い勝手や流通の事情で徐々に一体型へ収束した経緯があるからだ。

 「日立は2004年まで“Woooセレクション”として最後まで分離型を続けていたのですが、2005年から一体型に移行しました。今回はある意味、機が熟したと思っています。分離型になると箱が1つ増えるわけですが、販売店を含めて、あまり抵抗は感じないようです。むしろデザインを好意的に受け止めてもらえるケースがほとんど」(尾関氏)

 一方、ケーブルのワイヤレス化はオプションという形で盛り込んだ。同社は4.2〜4.8GHz帯を使うUWB(Ultra-WideBand)のワイヤレスユニット「TP-WL700H」(送受信機のセット)を2008年1月に発売する予定で、最大9メートルの距離でハイビジョン映像のワイヤレス伝送が可能になる。

photo 「TP-WL700H」の受信部

 今回、採用したのは、米Tzero Technologiesの技術。通信の信頼性を向上させるため、入力信号をリアルタイムにJPEG2000へ変換し、マルチチャンネルのオーディオ信号やHDMI CEC信号(Woooリンク)とともにワイヤレス伝送する仕組みだ。また2つのアンテナを使って伝送距離や帯域幅を確保するUltra MIMOも特徴となっている(→Tzeroのインタビュー記事)。

 送受信器は、いずれもHDMI接続のため組み合わせる機器を選ばない。ただし、筐体は大きめで、電源コンセントやHDMIケーブルもそれぞれ必要になるといったネックは残されている。「数年先には内蔵を含め、標準機能にすることを検討していきます。ワイヤレス機能を内蔵できれば、そうしたデメリットはなくなります」(駒井氏)。

“2008年春モデル”だったUTシリーズ

 満を持して投入されたように見えるUTシリーズだが、発売時期を知って首を傾げた人も多いことだろう。12月中旬に発売されたのは32V型のみ。フルハイビジョン解像度で倍速駆動を盛り込んだ37V型は2008年の2月、そして42V型は4月に発売される予定になっている。3機種のうち、1機種だけはボーナス商戦に“ぎりぎりセーフ”といった印象だ。

 「通常の製品サイクルでは、春(2〜3月)と秋(9〜10月)に新製品を出し、間に合わないものは次の時期を待つのが普通です。しかし、今回はとにかく製品を見てもらいたくて、32インチの出荷を“前倒し”しました」(尾関氏)

 “前倒し”という言葉から推察できるように、もともとUTシリーズは2008年の春モデルとして企画された機種だった。しかし、今年の業界動向を見て「他社もやっているな」(同氏)と感じたため、グループを挙げた一大プロジェクトで開発を早めたという。例えば薄型パネルの開発はIPS方式の生みの親として知られる日立研究所、空気の流れを解析したのは機械研究所、実際の製品化を進めたコンシューマエレクトロニクス研究所や量産技術の生産技術研究所など、まさにグループ総動員。大企業に似合わないほどの柔軟性を日立が持っていることが伺える。

photo CEATECで参考出展した19ミリ厚の試作機。バックライトにLEDを採用している点がUTシリーズと大きく異なるが、背面処理やフロアスタンドの提案など、そのコンセプトはUTシリーズに強く反映されている

 結果として“超薄型”液晶テレビで他社に先制した同社だが、冒頭のコメント通り、単なる数字競争とは捉えていない。

 「CEATECのときは、ある意味で“薄さ”競争の形になりました。他社が20ミリ台の液晶テレビを参考展示し、日立の試作機は19ミリ。違いは日立が“10ミリ台”を目標にしていたところにあると思います。もちろん有機ELですとか、今後もさらに薄くなる可能性はありますが、単なる数字競争にはピリオドを打ちたい気持ち。次は、薄さを生かして、いかに楽しい製品を提供するか。先にあるものを追求していきたいですね」(尾関氏)

 むしろ1歩引いた場所で眺めつつ、レイアウトフリーや将来のネットワーク機能といった部分を見据えた製品開発を進めていく構えだ。

 「われわれは将来の青写真を描きながら開発を進めてきました。今後は放送波だけでなくネット経由のコンテンツも増えていき、現在のパソコン向けサービスをテレビ画面で楽しむという方向にあると思います。電源を入れるだけで見たいコンテンツをすぐに引き出せる。ホームサーバの役割を持つ製品を含め、検討していきたいと思います」(駒井氏)

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