今年も残すところ、あと3日。元日が明ければ、今度は新春の商戦に電気街は入っていく。最近の傾向として年末商戦がそのまま年明け商戦につながっていく傾向がある。しかし、それと並行して米国・ラスベガスでは「International CES」が1月6日のプレスデーを皮切りに開始し、来年のテレビについてのトレンドが見えてくるはずだ。
来年、われわれが購入できる新しいテレビに投入されるだろう、新しい技術トレンドについて簡単に紹介し、今年のコラムを締めくくりたい。
すでに今年、CESや「CEATEC Japan」などでも技術展示が行われているが、倍速技術に加えて液晶テレビの問題を解決する手段として、いくつかの会社はバックライトの局所制御を、どこかのタイミングで実装してくるだろう。
液晶テレビの弱点のひとつに暗所コントラストの低さがある。例えば落ち着いた照明のリビングの場合、100ルクス以下ということもある。暗所での視聴を前提に絵作りされている映画は、照明を落としてから見るという人もいるはずだ。その際に黒が明るく見えてしまうためだ。
この問題は絵作りにも密接に関連している。全黒表示時に漏れてくるRGBの光を均等にできれば、多少黒浮きがあっても絵作りに大きな影響はないが、実際にはRGBバランスが崩れて色付いてしまうことがほとんどだ。黒が色付いてしまうと、暗部階調に色かぶりが目立ってしまう。
しかしエリアごとの映像の明るさに応じてバックライトを制御し、暗いエリアは暗く、明るいエリアは明るくコントロールできれば、画面全体のコントラストを高く保った上で、黒浮きを抑えられる。バックライト制御そのものは従来の液晶テレビでも行われていたが、画面全体のバックライトを制御しても同一画面上のコントラスト幅は広がらない上、RGBのゲインを揃えるためにはさほど大きく制御幅を振ることができない。
そこでLED光源を用い、個々のLED輝度と対象エリアのゲイン制御を映像の内容を分析しながら行うのである。つまり、LEDバックライトとセットで導入する必要がある。
米Dolby Laboratoriesが、「Dolby Vision」(ドルビービジョン)として技術ライセンスを行っているほか、家電各社も独自に局所制御を行う技術開発を行っており、早ければ来年中のどこかでは実用化される可能性もあるだろう(→ドルビーのインタビュー記事)。
この連載では、何度も「テレビは置かれる環境によって見え方が違う」と繰り返してきた。どんなに素晴らしい画質に調整したテレビでも、置かれる環境が変化すると調整値を変更しないと実力を発揮できない。
そこで従来も明るさセンサーを用いてバックライトなどを、比較的単純な手法で制御していたが、これを一歩推し進め、映像分析によるジャンル判別の結果と照らし合わせた自動画質調整まで行うようにしたのがパイオニアの「KURO」に実装されたリビングモードだった(→詳細記事)。
画質の自動調整を行うには、センサーの検討、映像分析手法の検討、各種データから理想的な画質調整へと導く関数の検討、それに実証試験と、開発にはかなりの時間と手間が必要になるが、その効果は大きい。
「置かれる環境と見る映像ソースのタイプごとに画質モードぐらいは変更しましょう」と書いてみても、実際には面倒くさくて画質モードを変更していない人がほとんどではないだろうか。
メーカー側も「店頭で見栄えする売れる絵作り」だけでなく、「購入後に多くの人によりよい画質で見てもらい、高い満足を得てもらう絵作り」へと変化してきており、自動的にテレビが置かれている環境に応じた画質調整を行う機能は、すべてのメーカーとは言わないが、いくつかのメーカーは今年のモデルに入れてくると予想する。
ボリューム調整の自動化の必要性に関しては、今年1月のCESでドルビーがデモした「Dolby Volume」(ドルビーボリューム)の話がある。その当時に、詳しく書いた記事があるので、技術的な詳細やインプレッションについてはそちらを参照して欲しい(→詳細記事)。
とにかく不思議と不自然さを感じさせず(何しろ音楽モノでも違和感が少ない)、各コンテンツの音量を同等に揃えてくれる。少し大きめの音で映画番組を楽しんでいるとき、CMに入ると突然音が大きくなって閉口するなんてことはよくある話だ。
ソリューションとしてはDolby Volumeだけではなく、いくつか選択肢はあるようだが、今のところもっとも効果的なのがDolby Volume。本当なら今頃は採用するテレビが出ていてもおかしくないが、実は開発がやや遅れていたようで、特定のDSPチップと組み合わせたソリューションが提供され始めた時期には、年末向けのテレビ開発はすでに終わっていた。その後、ソースコードの提供を開始し始め、なんとか来年モデルの開発スケジュールに乗りそう、という状況までは噂に届いている。
こちらはおそらく秋ぐらいの製品に、間違いなく乗ってくる。
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