画質は最近の液晶テレビらしくコントラストのめりはりがしっかりしたもの。BS/CATVのデジタル放送番組とHD DVDで使用してみたが、色合いや解像感にも不満はない。フルHD機と比べて解像度が落ちるのは仕方ないが、WXGA機の中では間違いなく上位グループ入りだ。また超薄型のUTシリーズは、バックライトのFL管と液晶パネルの距離が近く、輝度ムラの解消が1つの技術的なポイントになっているが、少なくとも正面から見る限りムラを感じることはなかった。超薄型でも画質を犠牲にしていないことを確認できたのは収穫だ。
むしろ気になったのは音のほう。最近の薄型テレビ全般にも言えることだが、薄型化とともにスピーカーが小さくなり、キャビネットの容量も限られてしまうため、音がこもった印象になりがち。UTシリーズの場合も、小さなスリットで頑張って音を出していることには関心するが、こもった音の印象は拭えない。テレビのバラエティ番組などはともかく、映画を視聴した際には少し不満を感じそうだ。
各モードで画質調整が可能で、入力端子ごとに画質モードを記憶することもできる。また入力表示を通常の「HDMI1」などから「VTR」「DVD1」などの名称に変更できたり、入力切替時に未接続の端子をスキップするように設定できるなど細かい配慮も見られた。
一方、入力切替ではいくつか気になる部分もあった。1つはリモコンに各入力をダイレクトに選択するボタンがないこと。レコーダーなどを複数所有していて背面端子を埋めている場合は、入力切替ボタンを何度も押すのが面倒になるし、学習リモコンを使っている場合も入力端子を一発指定できない。またモニター本体にあるD-Sub15ピンにPCを接続する場合は、使用する前に必ず「モニター単体モード」に切り替える手間が発生する。WoooステーションとPCを併用するときは、DVI-HDMI変換コネクタなどを用いてHDMI接続したほうが使い勝手は良いかもしれない。
「Woooリンク」による外部機器との操作連携は、AVアンプや同社製レコーダーが対象となるが、電源連動だけなら他社製品でも可能だ。そこで、いつものようにパナソニックの「VIERAリンク」対応HDD内蔵デジタルCATV STB「TZ-DCH2000」と組み合わせたところ、STB側のリモコン操作(電源オン/オフ)でテレビの電源が連動できた。
ただ、STBの電源を入れた直後にテレビの電源は入るものの、DCH2000側の起動に時間がかかるためか、そのままテレビがパワーセーブモードに入ってしまうこともあった(待っていれば映像信号を検知して復帰する)。また、テレビ側の電源オフでDCH2000をオフにすることも可能。逆にテレビ側の電源オンでDCH2000を起動させることはできなかったが、これはSTBの仕様である。
UTシリーズは、同社従来機と同様に内蔵HDD感覚の録画機能を搭載している。今回はiVDRメディアが手元になかったため録画機能を検証することはできなかったが、EPGによる録画予約はもちろん、録画を始めてから残りの録画時間を指定するクイックタイマー録画、フォルダ機能、再生中の30秒スキップ/10秒バック、本編だけをスムーズに再生するオートチャプター(いいとこジャンプ)など、HDDレコーダーに求められる機能はほぼ網羅している。
ただし、デジタルチューナーは1系統のため、デジタル放送で裏番組を視聴することはできない。またXcodeチップは非搭載でMPEG-2トランスコードによるハイビジョン長時間録画にも対応していない。UTシリーズは、その外観からプレミアムなテレビと受け止められがちだが、冒頭で紹介したように実はスタンダードなモデルであり、付加価値をそぎ落として販売価格を抑えているからだ。それでも今回の32インチはともかく、37インチ以上のラインアップにはデジタル2チューナーのWoooステーションを付属してほしかったと思う。
UTシリーズは、薄型テレビの“次の潮流”を占う上で非常に面白い製品だ。標準構成のスタンドもスマートだが、オプションのフロアスタンドやワイヤレスといった提案は設置の柔軟性を増し、インテリアを考え直す機会を提供してくれる。また“壁掛け”を現実的に捉えることができる薄さと重さも貴重。UTシリーズを眺めつつ、部屋の模様替えをアレコレ考えるのはきっと楽しいだろう。素直にそう感じる製品だ。
余談になるが、UTシリーズのカタログ(長瀬智也さんの表紙が目印)は、見開きの1ページめと2ページめがどちらも背面のカットになっている。つまり、製品イメージを左右する大事なトコロでテレビが“お尻”を向けている珍しい製品カタログなのだ。
でも、恐らくほとんどの人は違和感を感じないだろう。それが製品のアイデンティティと即座に理解する人もいれば、画面に「Wooo」ロゴが表示されていると勘違いする人もいるかもしれない。いずれにしてもナチュラルに見えてしまうところが面白いので、機会があったら手にとってみてほしい。
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