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ノイズ知らずの多機能コンパクト――富士フイルム「FinePix F100fd」レビュー(2/6 ページ)

» 2008年05月14日 08時30分 公開
[荻窪圭,ITmedia]

ダイナミックレンジ400%の中味とは

 2008年の流行のひとつは「ダイナミックレンジを広く見せる技」である。

 アプローチは2つ。ひとつは「白飛びを抑える」ことでダイナミックレンジを広く見せる方法。もうひとつは、暗部を持ち上げることで暗くて見えない部分の画像を浮かび上がらせ、ダイナミックレンジを広く見せる方法。

 パナソニックの「暗部補正」は文字通り、暗部をデジタル処理で持ち上げる。ソニーのダイナミックレンジオプティマイザー(D-R)もそうだし、カシオのダイナミックレンジを広げる機能もそう。

 やりすぎるとコントラストが低くてメリハリがない絵になるが、効果が分かりやすくてよい。

 ソニーの場合「D-R+」にすることでさらに白飛びを抑える機能が働く。具体的にはちょっとアンダー目で撮って白飛びを防ぎつつ暗部を持ち上げて全体を整える。

 F100fdの「ダイナミックレンジ400%」機能は明白な後者。白飛びを防ぐための機能で、暗部に関しては何も処理を行わない。

ダイナミックレンジ設定。普段はオートでOK。DR100はダイナミックレンジ拡張を行わないとき。ISO100やISO200のときは使えない項目がグレーになる

 具体的には「露出値を変えないでISO感度を2段落として」撮影する。すると当然露出アンダーになるわけだが、その分、ハイライト部が残る。で、あとでアンダーになった部分(暗部)をデジタル処理で持ち上げてやるわけだ。いったん感度を落として撮影するため、暗部を持ち上げてもノイズはちゃんと抑えられている(というか、ISO400相当のものに抑えられている)。

 例えばISO400で1/250秒 F3.3のとき、「ダイナミックレンジ400%」だと、まずISO100の1/250秒F3.3で撮影し、暗部だけ2段分持ち上げる処理を行って、白飛びを防ぎつつ全体としてバランスの取れた絵を作るわけである。

 例えばこんなときに差が出る。

左がダイナミックレンジ100%(つまり通常)、右がダイナミックレンジ400%時
通常の元絵(左)と、ダイナミックレンジ400%の元絵(右)

 背景が比較的暗いところにいる白い猫である。背景との明暗差が大きいため、普通は猫が白飛びを起こす。

 で、左がISO100で撮ったモノ。右がISO400に増感してダイナミックレンジ400%で撮ったものだ。背景は両者ともほとんど違わないのに、右側は猫の毛が白飛びしてない。

 よくあるのは逆光状態で撮影したとき、メインの被写体に露出はあってるのだが背景が白飛びしてしまった……という例。

D-R100%(左)、D-R400%(右)

 そのような状況で撮り比べてみたが、あまり差はないように見える。でもヒストグラムを見ると、ハイライト部に明らかな差異がある。

 ってことは、暗部を持ち上げてはっきりさせたいときは、露出オーバー目で撮って、ハイライト部はダイナミックレンジ400%機能で残してもらえばいいのではないか。確かにその通りだが、試してみると、効果的なのは+1/3から+2/3くらい。それ以上だとオーバー分がまさってしまう。

 400%(つまり4倍)というと大変効果がありそうだが、実際にはこのくらいである。

 この方法の欠点は、ISO感度を上げないとダイナミックレンジを広げた撮影はできないということと、通常の撮影でも白飛びしない構図では効果が薄いこと(逆にISO感度が上がる分、不利なことも)。上手に使えば効果は絶大だが、問題は使いどころ。

 上位モデルの「FinePix S100fs」のように「ダイナミックレンジブラケット」機能があるとよかったのだけれどもね。

 もっとも、富士フイルムはF100fdのユーザーに煩雑な操作や微妙な判断を求めているわけじゃない。ISO感度とダイナミックレンジをオートにしておけば、カメラが自動的に判断して撮影してくれるからだ。むしろ、オートで撮って欲しいと思ってるはずである。

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