AV機器の分野ではここ数年「テレビのデジタル化」が大きな話題となっているが、2011年のアナログ停波の影響を免れないという点では、多くの製品がテレビチューナーを搭載するカーナビも同じ。アナログTVチューナーの装備はすでに一般化しているが、これをデジタルチューナーに置き換える動きが進んでいる。
カーナビの世界では、このデジタル放送受信用チューナーを「フルセグチューナー」と呼ぶことがある。地上デジタル放送は全帯域を13分割し、うち12の帯域(セグメント)を通常放送すなわち「地デジ」に、残りの1セグメントを移動端末用に割り当ていわゆる「ワンセグ」放送に利用しているが、フルセグチューナーはこの13のセグメントをすべて利用する。高品質な地デジを受信できるときエリアでは地デジで、それ以外は少し画質は落ちるが受信エリアの広いワンセグで、と状況に応じて受信セグメントを切り替えられるのが特徴だ。
ただし、このフルセグという言葉は一般的とは言えない。パナソニック“Strada”の機能紹介では、上述した意味でフルセグという言葉が用いられているが、地デジ12セグメント=フルセグと解釈するメーカーもある。もっとも、地デジとワンセグを臨機応変にスイッチさせる機能は今後もカーナビを中心に搭載される見込みで、フルセグ=13セグメントという使われ方が定着する可能性は高い。
HDD搭載機が主流となり、iPodとの連携や動画再生機能などPC並みの機能を備えつつあるカーナビだが、PCに後れを取っている分野がある。自動車という移動体ゆえに高速ネットワーク接続を標準で備えるには至っておらず、結果として位置情報の取得・送信機能に乏しいのだ。
メーカーはこの問題を携帯電話/PHSとのリンクで解決しようとしている。例えば、5月に発表されたパイオニアのサイバーナビでは、ケーブルやBluetoothを利用した携帯電話との接続に加え、データ通信専用モジュールを提供。同社が提供するオンラインサービス「スマートループ」との接続性を改善し、最新の渋滞情報や駐車場情報が入手しやすくなった。
同時期に発表された“エアーナビ”「AVIC-T10」も要注目。こちらはPND(パーソナル・ナビゲーション・デバイス:ナビ機能付き携帯端末)に分類される製品だが、ネットと連携した利用を前提に設計され、ソフトバンクモバイルのHSDPA網を利用した通信機能が標準装備されている。しかも料金は1029/2079円の二段階定額制。これまでネックとされてきた通信コストの問題もクリアしている。
定額通信機能がすぐにカーナビへ波及すると考えるのは早計だが、ネットとの連携強化がトレンドということを踏まえると、時代を先取りした対応といえるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR