ここ数年の間に発売された薄型テレビやHDDレコーダーの多くには、接続端子として「HDMI」(High-Definition Mulitimedia Interface)が装備されている。ケーブル1本で映像と音声を扱えるうえ、信号はデジタルのまま転送される。ハイビジョン時代のケーブルとして、事実上標準の地位を固めつつああると言っていいだろう。
そのHDMIには、不正コピー防止技術として「HDCP」(High-bandwidth Digital Content Protection system)が採用されている。デジタル信号は理論上劣化なしに複製することが可能なため、著作権保護の観点から欠かせないとされているものだ。
なお、PCでモニタの接続に利用されている「DVI」はHDMIと基本部分で互換性があり、DVIとHDMIの間で相互出力が可能だが、PC用モニターの多くはまだHDCPに非対応のため、HDCPで保護されたコンテンツは鑑賞できないことが多い。
HDCPは、送信機と受信機が互いの「鍵」を認証しあい、身元を確認することでデータの安全性を確保している。ここでは、家庭用レコーダーで再生した映像(送信側)を薄型テレビで視聴する(受信側)、という前提で説明してみよう。
最初に行われるのは、送信機に内蔵された公開鍵(Device Private Keys:DPK)の認証作業。このDPKは、IT系企業が合同で設立したDigital Content Protection,LLCにより、HDCPの仕様を満たすベンダーにのみ提供されるもので、いわば身分証明に相当するものだ。この鍵が正規のものであれば、送信側と受信側との間で秘密値を共有することが可能になる。
次に行われるのが、受信機が持つDPKの認証作業。受信機が正規のDPKを持つ場合、Key Selection Vectors(KSVs)と呼ばれるデータが集められ、第2段階のクリアとなる。
最後はコンテンツの暗号化/復号化だ。送受信する双方が正規のDPKを持つことが確認されると、暗号化用モジュール(HDCP Cipher)が生成される。コンテンツ側が持つ24ビットの暗号データと、HDCP Cipherから出力される24ビットの擬似ランダムデータは、排他的論理和がとられたうえでエンコードされ受信機に送信、それをHDCP Cipherの擬似ランダムデータと排他的論理和をとり復号化。これでようやく、コンテンツの転送=映像の再生が可能になるのだ。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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