スマートフォン(SmartPhone)は、文字どおりスマート(賢い、気の利いた)な携帯電話を意味する。通話をメイン機能として進化してきた携帯電話だが、デジタル化を契機にインターネットとの融合が進展し、次第にWeb閲覧やメール送受信といった通信サービスの強化に重点が置かれるようになった。スマートフォンは、その路線をさらに推し進めた端末といえる。
ただし、スマートフォンという言葉は抽象的なもので、IEEEやISOで標準化されているわけではない。一般にスマートフォンとして認知されている機種、ここではソフトバンクモバイルの「X02NK」とNTTドコモの「BlackBerry 8707h」を例に、「スマートフォン」の基準を考えてみよう。
スマートフォンの基本要件には、音声通話など携帯電話としてのベーシックな機能が挙げられる。特に音声通話は欠かせないもので、これがなければPDAやPCに限りなく近いデバイスとなってしまう。
付加要件の第1には、高度なPIM(Personal Information Manager)機能の装備が挙げられる。一般的な携帯電話にもカレンダーや住所録の機能は装備されているが、Microsoft OutlookやLotus Notesと同期できる(X02NK)、Microsoft Exchangeなどサーバと連携できる(8707h)など、業務用のスケジュール管理にも耐えうるかどうかという観点ではスマートフォンに比べ見劣りする製品が多い。
第2は、PC/PDAに近い拡張性だろう。ユーザーが自由にアプリケーションを導入できることだけでなく、高度な機能/拡張性を備えているか、という点もポイントになる。Nokia X02NKはSymbian S60プラットフォーム準拠で、開発環境の整備が進んでいる。BlackBerry 8707hも、Javaベースの開発環境に加え、Microsoft .NETのAPIを活用できる「BlackBerry Plug-in for Microsoft Visual Studio」も提供されている。
第3は、フルキーボードのサポートだろう。BlackBerry 8707hは、本体下部にQWERTY方式のキーが配置されている。Nokia X02NKは本体にフルキーボードは装備されないが、Bluetoothで外付けキーボードを利用できる。
上記の3基準でいえば、先日発売されたiPhone 3Gはスマートフォンとしての要件を満たしているといえる。ネットワークサービス「Mobile Me」やMicrosoft Exchangeを利用したPIM機能、Mac OS Xで実績のある開発環境。ソフトウェアによる実装だが、Appleらしい操作性を持つフルキーボードも提供される。強力な新機種の登場でがぜんおもしろくなってきた日本のスマートフォン市場、iPhone 3Gの“黒船”効果に期待したい。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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